2021/2/14

ためらいは無用

1.5リッターのディーゼルターボは、「プジョー308 BlueHDi」などと共通だ。最高出力130PSを3750rpmで、300N・mの最大トルクはちょっと高めの1750rpmで発生する。自然吸気のガソリンエンジンでいえば、3リッター並みの大トルクで、この巨体をスイスイ走らせる。

フロントに横置きで積まれる1.5リッター直4ディーゼルターボエンジン「DV5」は最高出力130PSと最大トルク300N・mを発生。排ガス浄化システムとして酸化触媒とSCR選択還元触媒、ディーゼル微粒子フィルターを使う

当初、合流時にやさしくアクセルを扱っていたら、2台いっぺんに入られて、大変腹立たしい思いをした。大きなボディーに、ディーゼルとはいっても1.5リッターという小排気量だから、出足がもっさりしているのだ。

と思っていたら、そうではなかった。この直4ディーゼルターボと8段ATのセット、エンジンブレーキはほとんど利かない。だから、ついアクセルを踏み込んで加速するのを、ドライバーである筆者自身がためらっていたことに気づいた。加速時には積極的にアクセルを踏み込み、減速時には積極的にブレーキを踏み込んでやれば、ベルランゴは意外と活発に走る力を持っている。

ただし、日本のたいていの高速道路の制限速度である100km/hに達してしまうと、そこから先は、仮にアクセルペダルをフロアまで踏み込んでやっても、ベルランゴはそれ以上速度を上げることを、ほとんど拒否する。巡航性能重視のギアリングと前面投影面積のでかさのなせるわざだろう。そのかわり、100km/hを維持して、えんえん走り続けることができる。

驚嘆するのは、その100km/h巡航の際の静粛性と乗り心地のすばらしさだ。ハイドロニューマチックでもなければ、可変ダンピングも持っていない。純然たるメカニカルサスペンションで、軟らかめの設定なのに、不思議とピッチングもノーズダイブも見せず、フラットな姿勢を保ち続ける。ワイドトレッドとロングホイールベースが効いているのだろう。乗り心地のよさは、205/60R16という、いまどきとしては小径で扁平(へんぺい)率の高いサイズのタイヤを履いていることもある。

試乗車のボディーカラーは「ブランバンキーズ」(白)。「サーブル」(ベージュ系)と「アクアグリーン」(薄緑)を加えた全3色がラインアップされる

デザインの遊びが面白い

いかにもシトロエン。と書くと、シトロエンなのだから当たり前だけれど、2018年に本国で発表となったこの3代目ベルランゴは、シトロエンといえばハイドロニューマチックだった時代を思わせる、快適至極な乗り心地をメカサスで実現している。

ボディーの剛性感がしっかりしていることも印象的だ。プラットホームは、「EMP2」というグループPSAの最新横置きエンジン用を使っている。プジョー308や「シトロエンC4ピカソ」と同じということだけれど、ベルランゴはホイールベースが2785mmと、「プジョー308SW」や「シトロエンC5エアクロスSUV」より55mm長くて、リアのドアはスライド式だから開口部が広い。それでも、骨太感がしっかりとある。極太のABCピラーも、大いに貢献しているのだろう。

ダッシュボードは上部がマーブル模様入りのグレー、下部がブラックというカラーリング。ウインドシールドがシートから遠い(前に出ている)ので広々としている

巡航に入ってちょっと運転に余裕が出たので、広い室内を見回してみる。Aピラーが極太のわりに視界を邪魔しないことに、ちょっと驚いた。全体としては実用車然とした内装ではある。だけど、フランス車はやっぱりオシャレだ、とあらためて思い至った。

それはほんのちょっとしたデザインの遊びといってよいのか、具体的には、液晶スクリーンに使われている鮮やかなオレンジ色だったり、その鮮やかなオレンジ色の隅っこに使われている薄いターコイズブルーだったり、あるいはターコイズブルーがグレー基調のシートの一部に反復して使われていたり、はたまた助手席グローブボックスの革とおぼしきベルトの色が、シートの色とコーディネートされているところなどに、フランスのファミリーカーの温かみのようなものをそこはかとなく感じるのだった。ビビッドな色と無彩色を組み合わせてシックに見せる手法とか素材の使い方こそモダン・シトロエンなのだろう。

シートには濃いグレーと薄いグレーを基本に、ターコイズブルーの差し色というファブリックを採用。運転席、助手席とも格納可能なセンターアームレストが備わる
リアシートの座面は3座独立タイプ。上位グレードでは背もたれをすべて個別に倒せるが、「フィール」の場合は左と中央がセットとなる2:1分割式となる
次のページ
ブランケットで自分色に
MONO TRENDY連載記事一覧