韓流に続け タイBLドラマ、多彩な恋愛設定が魅力
タイで制作されるドラマの存在感が、日本でも急激に高まっている。2020年11月には、テレビ朝日がタイを代表するエンターテインメント企業・GMMTV社と業務提携を発表した。日本でも韓流に続くタイドラマブームが巻き起こるかもしれない。
日本でタイドラマの人気に火がついたのは、2020年のゴールデンウイーク前後から。きっかけは、GMMTVが制作しタイで2月に放送を開始した作品「2gether(トゥギャザー)」だ。
同作は当時日本未放送・未配信だったが、YouTubeで視聴した日本のファンが、ツイッターに「面白い」と投稿。評判が、新型コロナウイルス禍で在宅時間が増え、新しいコンテンツを求めていた人たちに伝わった。
日本での2getherの配給権を獲得したコンテンツセブンの担当者は、「従来のアジア制作ドラマのファンは中高年中心だったが、タイドラマはSNS(交流サイト)を通じて熱が広がったことから、若年層を含め幅広いファンがいる印象だ」と話す。
海外作品を扱う日本の配給会社や配信サービス、放送局もタイドラマ人気に注目。2getherは7月からRakutenTVで配信され、10月からはWOWOWでの放送がスタートしている。
GMMTV以外のタイの制作会社の作品も人気を集めており、コンテンツセブンは、タイ・Me Mind Y社が手掛けるドラマ「TharnType(ターンタイプ)2 -7Years of Love-」の配給権も獲得。ほかにも、複数の配給会社がタイドラマの配給権獲得に乗り出しており、例えばクロックワークスは、2getherのスピンオフ特別編にあたる「Still 2gether」などGMMTVの3作品の獲得を発表。順次放送を開始する。
日本の配給・放送業界では、タイドラマが韓流ドラマに続く人気ジャンルになるのではと、期待する声が大きい。ただ、そのために必要なのはファン層の拡大だろう。
先の2getherやTharnTypeは、男性同士の恋愛を描いた、いわゆる「BL(ボーイズラブ)」と呼ばれるジャンルの作品。日本におけるタイドラマブームは、当初はBL作品のファンから始まったのだ。
タイドラマには様々な設定のラブストーリーがあり、視聴者はそこに魅了されることが多い。コンテンツセブンの担当者は「2getherは、主演2人のビジュアルを入り口に、K-POPやジャニーズなど、もともとアイドルが好きだった層に刺さった印象だ」と分析する。
一方、「タイドラマの魅力はBLだけに止まらない」と語るのは、GMMTVとの提携事業に携わるテレビ朝日ビジネスプロデュース局の水高愛氏だ。テレビ朝日は15年にタイ法人「バンコクビジネスビューロー」を設立し、様々なテレビ局と事業に取り組んできた。水高氏は「タイのコンテンツの質の高さ、中でもGMMTVは、BL作品以外の分野のドラマや、さらに俳優が出演するバラエティー番組など幅が広いことが、提携のポイントだった」と話す。
GMMTVが発表した21年のドラマ一覧で注目されるのは、2getherの主演2人が出演する「F4 Thailand / Boys over flowers」だ。実は日本の人気マンガ「花より男子」が原作で、日本での放送・配信先はまだ発表されていないが、ファン層を広げる潜在力を秘めた作品と言えそうだ。
クロックワークスが権利を獲得し、WOWOWで放送のドラマ「I'm Tee,Me Too/アイム・ティー、ミー・トゥー」も注目作。BL作品で人気の6人が出演するものの、男子の友情を描くハートフルコメディーだ。
テレビ朝日の参入で、タイドラマとの接点を増やす強力な効果が期待される。水高氏は具体的には決まってないとしながらも、「地上波、BS、CS、動画配信と様々に展開していく」と話す。作品の世界観を伝えるリアルイベント事業にも力を注ぐという。
(日経エンタテインメント!2月号より再構成 文・羽田 健治)
[2021年1月16日付 日本経済新聞夕刊]
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