老舗の菓匠らしい佇まいの看板を掲げる「千本玉壽軒」

京都・西陣の京菓子店「本家玉壽軒(たまじゅけん)」は、江戸後期に綴織の井筒屋が機仕事のかたわらに置いていた一文菓子が好評で、幕末に京の菓匠に名を連ねたそう。大正時代の中ごろに、道路拡張に伴い本家が今出川大宮に移転。元本家だった地で1938年(昭和13年)に創業し、独立したのが「千本玉壽軒」だ。

茶寮のカウンター。お客様の目の前でお菓子を仕上げ、当主がお茶をたててくれる

千本玉壽軒の銘菓は大覚寺や仁和寺などの寺院の御用達としても知られる。現在3代目の当主、元島真弥氏は裏千家に入門して20年。茶道にも通じているが、「お茶をもっと身近に楽しんでもらえたら」という思いで2020年秋、千本玉壽軒の並びに「茶寮SENTAMA」をオープンした。

入り口に手水鉢があり、靴を脱いで二階へというのが、どこか茶の湯に招かれた気分にしてくれる。手前にカウンター、奥は梁(はり)や床柱など昔ながらの木造家屋の趣だが、テーブル席が並ぶ。ユニークなのは、和菓子をその場で仕上げてもらえるところ。季節をテーマにした繊細な京の和菓子を、菓銘の由来や素材についての説明も聞きながら、椅子席でゆっくりと味わえる時間は格別だ。

美しい紅餡(あん)を、大和芋で雪のように包み込んだ当主お手製の銘菓「雪餅」。お干菓子には千本玉壽軒の紋

壁際に並ぶお茶わんの中から好きなものを選び、目の前でたててもらったお茶を楽しめるのも「おもてなし」を感じる。当主の熱い思いがたっぷりと詰まった茶寮である。