AIや5Gを正確に理解する ビジネス教養のテクノロジー『テクノロジーの教科書』

「知ったつもり」でいることは怖い
「知ったつもり」でいることは怖い

テクノロジーに関する知識はビジネスの新しい教養だ。AI(人工知能)、5G、DX(デジタルトランスフォーメーション)……。注目度の上がっているこれらの概念や用語について、皆さんは正しく理解できているだろううか。今回紹介する『テクノロジーの教科書』は、シリコンバレーの最先端で活躍するベンチャー投資家が解説する新技術の入門書。次世代に活躍するビジネスリーダーが、実践に直結する知識を身に付けるのにピッタリの一冊といえよう。

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山本康正氏

著者の山本康正氏は日米で活動するベンチャーキャピタル(VC)大手、DNXベンチャーズでインダストリー・パートナーを務めています。1981年、大阪府生まれ。京都大学卒。東京大学で修士号を取得後、三菱UFJ銀行ニューヨーク米州本部に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得しました。その後グーグルに入社して、フィンテックやAIなどで日本企業のデジタル活用の推進にたずさわりました。京都大学大学院総合生存学館特任准教授、ハーバード大学客員研究員のほか、日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員を務めています。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社現代新書)、『シリコンバレーのVC=ベンチャーキャピタリストは何を見ているのか』(東洋経済新報社)があります。

テクノロジーが変えるビジネス

ドリルを買う顧客が望んでいるのは、ドリルそのものではなく「穴」である――。こんなたとえがあります。マーケティングの大家のセオドア・レビット氏の発想です。コロナ禍で移動に制限がかかり、商談のために出張できないビジネスパーソンが増えました。そもそも、出張は、営業先とスムーズに話ができれば良いわけです。2011年設立のビデオ会議システムベンチャー、Zoom(ズーム)が急成長したのは、テクノロジーとニーズがうまく合致したからでした。同社は新型コロナの影響もあり、2020年10月に時価総額が1年前の8倍の約15兆円に達し、航空最大手7社の合計額やIBMを上回りました。

創業者のエリック・ユアン氏はもともとビジネス用のビデオ会議システムのWebex(後にシスコに買収)に英語もうまく話せないまま入社し、将来のモバイル機器も活用したビデオ会議に大幅な可能性を感じ、既存の巨大なシステムの修正に取り組んでいました。しかし、ゼロから作り直した方が良いものが速くできると確信しZoomを設立したのです。
 そのときのビジョンは「顧客に幸せを届ける」というもので、ビデオ会議というのはあくまでその手段として考えているため、競合よりも良いものを作ろうという考え方よりも、ドリルではなく穴のたとえと同様に、フェイスブックなど異業種であるSNSをベンチマークにしていました。日本でも全日空がアバターサービスを展開し、ドリルよりも穴を優先するという発想に動き始めています。
(プロローグ テクノロジーが変えるビジネス 28~29ページ)
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