スイーツ系や和風など、たくさんのフレーバーが発売されてきた

特許で守られた「秘中の秘」の製法

実は「雪見だいふく」は特許で守られた商品だ。過去には類似商品が登場したこともあるが、特許が認められて以降は、国内ではほぼ「オンリーワン」の評価を得ている。「商品の認知率は90%を超えている」と、安藤氏は40年間で培ったネームバリューに自信をのぞかせる。そもそも製造は容易ではない。餅は冷やすと硬くなる性質を持つ。一方、中身のアイスは温度が上がれば溶けてしまう。ほとんど正反対と呼べる2種類の素材を、好ましい食感のまま口に入れてもらうのは「かなりのレベルの無理難題」(安藤氏)という。

まねの難しい製法だからこそ、特許の成立にもつながった。 カップアイスであれば、器にアイスを注入するだけで済む。素材が1種類だから、扱いはそう難しくない。しかし「雪見だいふく」は餅とアイスという、かなり特性の異なる2種類を扱う。試行錯誤の末に考案された特許技術の同社製法では「餅がまだ熱い状態で、アイスをくるむ」という。餅が硬くなってしまうと、冷やす前に形崩れを起こしやすくなる。だから、アイスをくるむまでは餅にある程度の熱を帯びさせておく必要があるわけだ。当然、くるんだ後に冷やすのだが、冷やしても餅がカチカチにならない技術は「秘中の秘」。特に重要なのは「餅の成分比率」だそうだ。

通常の切り餅に使う餅米だけでは、あのやわらかい食感を保てない。アイスをうまく包むためにも、餅部分の配合には特殊な工夫が必要で、かなりデリケートな配合なのだという。「雪見だいふく」にはこれまでたくさんのバリエーションが企画されてきた。多くのケースでは、アイス部分にイチゴやチョコといった、通常のバニラアイスとは異なるフレーバーを用いるが、このフレーバー選びは容易ではない。なぜなら、餅との相性問題を考慮する必要があるからだ。「メインではない、わずかな量の食材でも、製造工程上の差し障りが生じる可能性があり、見極めが難しい」という。

過去に数々の人気商品が生まれてきただけに、新フレーバーの開発は、安藤氏が属する「雪見だいふくブランド課」の大事な仕事だ。しかし、「確認事項が多く、簡単に新食材を使うわけにはいかない」という。たとえば、近年、ブームを呼んだタピオカも検討したが、実現しなかった食材の一例だ。常温ではもちもちした歯触りのタピオカも、「冷凍状態では硬くなってしまい、アイスとして成り立たない」と判断された。製造工程も手が込んでいるので、新たなフレーバーを選ぶにあたっては、技術チームとの擦り合わせが欠かせない。新たなフレーバーを求めて、商品開発チームは日々、新顔スイーツやヒット食材のリサーチを重ねている。

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