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コロナワクチン、アメリカから接種ルポ 打った後に…

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日経メディカル

日本では2月下旬から接種が始まる見込みの新型コロナワクチン。2020年末から接種が始まった米国で、いち早く接種を受けたカリフォルニア州在住のNP(ナースプラクティショナー:診療看護師)の緒方さやかさんに実際のワクチン接種時の体験をリポートしていただいた。

◇   ◇   ◇

2020年末、新型コロナウイルスのワクチンを接種した。

私が受けたのはModerna社のものだったが、そのことには特に理由はない。Pfizer社とModrna社、「2社のワクチンのどちらを接種するかを選ぶことはできません」と事前に言われていた。12月16日に私が勤務する医療センターに到着したのはPfizer社のワクチンだったが、ICUやERなど病院サイドのスタッフへの接種が一通り済んだ後、クリニック勤務の私たちが受けたのは、たまたまModerna社のワクチンだったというだけのことだ。

ワクチン接種は大きな会議室で行われた。一般の患者さんが入り込まないようにするためか、ポスターの掲示などはなかった。

まず予約があることを確認された上で、問診票に記入してから接種してもらうのだが、全員が注射される瞬間の写真を撮ってもらっていた。そのため、接種を担当する看護師の他に、明らかに写真を撮る役目だと思われるメディカルアシスタントの方がいて、少し笑ってしまった。私も、他の人同様、接種の瞬間を撮影してもらった(写真1)。背後の壁には、銀色の巨大な風船で「VACCINE(ワクチン)」とスペルしてあった(写真2)。遊び心がうれしい。

接種の後、椅子に座って15分(アナフィラキシーショックの経験がある人の場合は30分)待つ間、ふと周りを見回すと、みんな今しがた撮った写真をSNSに載せているのだった。簡単なことだけれど、そうやってワクチンへの親近感をジワジワと高めていくことも、非常に大事だと思う。

ちなみに接種後は、3日ほど腕に軽い筋肉痛を感じた。インフルエンザの予防接種と同じような感覚である。ただし、ほかのワクチンでも副作用が出ることの多い同僚の医師は、「腕が腫れ上がり、肩から首にかけてひどい痛みが24時間続いた。抗体ができにくい可能性があるから飲んではいけないのを知ってはいたが、眠れないのでイブプロフェンを飲んでしまった。2回目の接種は、夕方に夫が帰ってきて子どもたちを見られる日、しかも自分が翌日休みの日に受けることにする」と言っていて驚いた。

ワクチン接種を決めた幾つかの理由

米国民の新型コロナワクチンへの信用度は、はっきり言って低い。そもそも、選挙日までにワクチンを認可して選挙に勝つことを目指していたトランプ氏が名付けたという、「Operation Warp Speed」という名前がまずひどい。ワープスピードで作ったワクチンだなどと呼べば、人々が安全性を疑ってしまうのは無理もないと、米政府の新型コロナ対策をリードするファウチ医師は指摘している[注1]

このワクチンに関して、数カ月前には米国民のわずか5割しか接種を希望していなかったが、最近の統計では6~7割に上がってきているようだ[注2]。私自身、ワクチンを接種するかどうか迷っていたのだが、勤務する医療機関にワクチンが到着して2日以内に、心を決めた。理由は幾つかある。

・エビデンスはないが、家族歴的にワクチンが膠原病の引き金になったりしないか、個人的には心配している。しかし、そのような可能性の真偽については、このワクチンが出てから何年も経たないと判明しないだろう。数年待つ気はない。だとしたら、数カ月待つのでも、今打つのでも大差ないのではないか。

・患者さんから、「ワクチンを打つ予定か」と聞かれることが増えてきた。自分がワクチンを接種して患者さんたちを守ってあげるのも、仕事のうちではないか。その考え方では、ワクチンを打つことで、新型コロナウイルスに感染して重症化する可能性を低くすることこそ、社会貢献になるとも言える。ロサンゼルスでは、病院のキャパシティーを超えたために、ギフトショップに患者を寝かせている状況がニュースになっている[注3]。他の都市でも、会議場や駐車場などにベッドが置かれ、野戦病院となりつつある。

・新型コロナの電話外来[注4]をしていると、最初のうちは介護士や工事現場で働く人など、感染経路が想像できるケースばかりを目にしてきた。また、ほとんどの患者さんが肥満でもあった。ところが最近では、感染対策に気を付けている人でも、在宅勤務をしている人でも感染しており、また肥満とも限らない。ウイルスがそこら中に広まっているという実感がある。

・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症である心臓病などについて、その長期的な影響がまだ分かっておらず、不安である。

・mRNAワクチンの仕組みに関して読んで、何となく納得した。

・Pfizer社は、トランプ氏のOperation Warp Speedの金銭的援助を受けずにワクチンを開発した(ただし、Moderna社はばっちり援助を受けている。このため、Pfizer社のワクチンを打ちたいと希望してはいたが、前述の通り選ぶことはできなかった)。

色々と理由を挙げてはいるものの、正直なところ、ワクチンを打てると聞いた途端に目の前が開けたような気がして、今まで感じていた不安が吹っ飛んでいった、ということが大きい。

[注1]Trump makes rosy vaccine timing front and center in campaign, predicting it's possible before Election Day https://abcnews.go.com/Politics/trump-makes-rosy-vaccine-timing-front-center-campaign/story?id=72877119

[注2]Early Vaccine Doubters Now Show a Willingness to Roll Up Their Sleeves https://www.nytimes.com/2020/12/26/health/covid-vaccine-hesitancy.html?searchResultPosition=2

[注3]L.A. County hospitals turn away ambulances, put patients in gift shop: 'I've never seen anything like this' https://www.latimes.com/california/story/2020-12-29/l-a-county-hospitals-at-the-breaking-point-turn-away-ambulances

[注4]関連記事:NPの私が新型コロナ感染に備えてする6つの準備 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/ogata/202012/568111.html

 いまだに息子の小学校はオンライン授業が続いている。近所のレストラン、カフェ、マッサージ店、土産物店、おもちゃ屋、服飾品店などの商店は端から潰れていっていて、テナント募集中の看板が増える一方だ。そんな暗いご時世に、光が差したように感じたのだ。その思いは、新型コロナの患者さんに直に接している医療者の方々なら、なおさら強く感じられることだろう。友人の弟はICUの看護師をしているが、ワクチンを打てることが決まって涙が出てきたらしい。

「誰が最初にワクチンを接種できるのか」という議論は、生命倫理における大きなパラドックスを抱えているが、このパンデミックにおいては何しろ時間がなかった。最初のワクチン(Pfizer社)が認可された12月11日、米国食品医薬品局(FDA)は、「まずは(1)医療従事者、(2)介護施設の職員や入居者──が優先されるべきだ」という声明を発表した[注5]が、接種の順序を決定する権限は州に委ねられている。

また、一口に医療者と言っても業種は多岐に及ぶため、医療者の中での優先順位に関するレコメンデーションも出ている[注6]。ニューヨーク州では、ワクチン接種に際して医療者同士の順番無視などが大問題となり[注7]、12月28日にはクオモ知事が、違反のあった医療者に罰金と免許剥奪(はくだつ)の罰則を課すと発表した。

そんなことを言えば、40歳で今は患者の多くを遠隔で診ているNP[注8]の私が、80歳代の心臓病の患者さんや、救急救命士たちよりも早くワクチンを打ってもよいのか? という疑問を感じずにはいられないが、とりあえず打てるものはありがたく打ってもらうことにした。

ただ、このワクチンで感染した際の重症化を防げても、新型コロナウイルスの感染拡大そのものを防ぐのにどれほどの効果があるのかは分からず、2回のワクチンを接種後[注9]でも、マスクをせずに外出するわけにはいかない。

個人的には、2回目のワクチンを接種して抗体ができるまでの数週間が経過した後には、祖母も高齢であることだし、できれば日本に一時帰国したい。しかし、子ども向けのワクチンは出ていないので、息子を連れて帰国するのは、日本の家族にも他の方々に対しても無責任な行動になってしまう。また、息子が登校できない間は、知人一家と子どもの世話を交代で担う「仮の家族」[注10]を作っているので、私だけおいそれと1週間も不在にするようなこともできない。結局、2回目のワクチン接種を受けた後も、実際の生活はほとんど変わらなさそうである。

次回もワクチンについて取り上げる。米国のワクチン反対派の人々についてと、医療従事者や介護施設の人たちの次に、誰が優先的にワクチン接種を受けたかについて、報告したい。

[注5]The Advisory Committee on Immunization Practices' Interim Recommendation for Allocating Initial Supplies of COVID-19 Vaccine - United States, 2020 https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6949e1.htm

[注6]Interim Considerations for COVID-19 Vaccination of Healthcare Personnel and Long-Term Care Facility Residents https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/acip-recs/vacc-specific/covid-19/clinical-considerations.html

[注7]Hospital Workers Start to 'Turn Against Each Other' to Get Vaccine https://www.nytimes.com/2020/12/24/nyregion/nyc-hospital-workers-covid-19-vaccine.html

[注8]ナースプラクティショナー(診療看護師)。一定の範囲内の診断や治療を行うことが認められている上級の看護職。

[注9]Moderna社のワクチンは4週間おいて2回目の接種を行う。Pfizer社のワクチンでは間隔は3週間。

[注10]関連記事:感染止まらぬ米国、「仮の家族」で診療時間捻出 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/ogata/202007/566209.html

[日経メディカル20201年1月12日付記事を再構成]※情報は掲載当時のものです。

緒方さやかさん
婦人科・成人科NP。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にある病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

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