白河 素晴らしいですね。シニア層を活性化して、いわゆる「働かないおじさん」問題の解消の一歩にもなるのでしょうか。

田中 まだ活性化とまではいっていないかもしれませんが、少なくとも「気づいた」ことだけでも大きいと思います。どうやって気づくかというと、在宅勤務をしていても全然連絡が来ないことで「おや?」と感じるそうです。出社して席に座っていればなんとなく仕事をしている感じだったのに、自宅でいくら待っていても上司からの指示や、部下からの相談や報告が来ない。「もしかしたら、自分の業務は、組織にとってそれほど重要な仕事ではなかったのではないか」と不安になる。すると、より積極的に情報を取ろうとしたり、提案したり、といったポジティブな行動へと向いていく。とてもいい変化ですよね。

白河 そういう人でも、今からでも行動すれば、遅くないと言えますか?

田中 全然遅くありませんよ。20年が気づきの1年だとしたら、21年は行動の1年です。ここから何をしていくかが分かれ目です。

女性のライフイベントはキャリアにプラス

白河 シニアもその他の人も、そして活躍を諦めていた女性も、今年を「行動の1年」とするために、まず何から始めたらいいでしょうか。ご著書で紹介されていた「プロティアン・キャリア診断(参照:記事末の診断表)」も参考になりますね。ちなみに私の診断結果は「セミプロティアン人材」でしたので、まだまだ修行が足りません。(笑)

田中 十分ですよ。僕もセミプロです。あの診断はちょっと厳しめに作ってあるんですよ。この診断で何をチェックしているかというと「変化対応力」です。健康診断と同じように、キャリアの変化対応力も定期的にチェックしたほうがいいと思っています。自分のキャリアは自分自身が一番よく理解すべきなのに、なかなか俯瞰(ふかん)して考える機会がない。自分の状態を客観的に理解しないまま、上司の「1on1(ワン・オン・ワン、個人面談)」を受けるから、会社の要望とのすり合わせに偏って、今の自分にとって何を大事にすべきかという本質的な思考ができずに「キャリア迷子」になってしまう。

白河 みんな、自分で自分を見つめる時間をもっと持つべきなんですね。

田中 はい、一部のエリートだけではなく、すべての人がやるべきです。長寿時代の到来で働く期間が長くなるということは、希望もあるけれど苦しさを伴うとも言えるわけです。長く付き合う自分のキャリアについて、主体的にマネジメントしていく意識を持たなければいけません。多くの人がキャリア迷子になってしまう理由は、単一のロールモデルに縛られているからです。先ほど述べた3つの劇的変化によって、キャリアの多様化は加速しています。

白河 個人の意識転換だけでなく、会社も変わるべきだと思います。私は常々、「女性活躍のために研修の数だけ増やして、女性たちに『頑張れ』というだけでは何も変わらない」と言っています。

田中 女性活躍に関して言えば、そもそも女性特有のライフイベントである出産や育児を「キャリアにとってマイナス」と考えること自体が間違っていると思います。キャリアはさまざまな経験を蓄積することで厚みを増す「資本」だと考えれば、出産・育児の経験もその人のパフォーマンスを増幅させる豊かな経験であるはずなのです。つまり、育休はブランクやブレーキではなく、普段の会社業務ではたまらない資本をためられる期間であると捉える。個人はもちろん会社側もその理解に立つことで、活躍できる女性は飛躍的に増えるはずです。

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