15歳から逆質問 「マキコさんの夢はなんですか?」

川崎レナさん

イベント参加者からの質問 たくさんの人や世代が関わると、みんなをまとめたり同じ方向に向かっていくことはとても難しいと思います。まとめるためのキーワードやポイント、考え方はありますか?

川崎さん 私はこれまで、子供たちだけではなく、大人の方(学校の先生や親など教育関係の方)にもワークショップをする機会がありました。その経験を通して気づいたことは「大人は子供と同じようにはいかない」ということでした。大人向けのワークショップと子供向けのワークショップでは、プログラムもボキャブラリーも全部変えなければなりません。

例えば、幼稚園生にワークショップをすると、とても純粋に「ぼくは世界を変えたいんだ!」と言ってきてくれる子がいたりしますが、大人の方は「自分は何も変えられない」という現実を見てきた歴史が子供たちよりもずっと長いなどの理由で、なかなかそうはいきません。

でも、大人でも子供でも、全員が同じように考えるわけではなく、世代が違うからではなく違う人間だから、1人1人違うことを考えるのだと私は思っています。

そこで、世代の違う人が集まるようなワークショップで私がやっていることは、まずは「原点に戻ってもらう」ことです。「一度、3歳児だった頃に戻ってみましょう!」「世界を変えたいとか、スーパーヒーローになりたいとか、考えていた頃に戻ってみてください!」と言っています。

原点に戻ってもらって、それから現実を見て、本当に現実的に必要な策を考えてもらいます。一番純粋な思いを理想としてもっていた頃の気持ちがあれば、世界は変えられると思うからです。

川崎さん 私がマキコさんに質問したかったことは「将来の夢ってなんですか?」です。持続可能ということを考える場合、未来を見据えないといけないと思います。マキコさんのプロフィルを拝見して、すべてをやってきた方だという印象をもったのですが、すべてをやりきってきた人がどんな夢をもっているのか、どんな未来を見据えているのか、とても興味があります。

マキコさん 自分の中で「すべてをやってきた」という意識はまったくなく、確かにいろいろな組織でいろいろな役割を果たしてきましたが、これからの人生を考えれば、私は「今が一番若い」わけなので(笑)夢はいろいろありますが、「こういう世の中で暮らしたい!」というものが私の中にはあって、それは「属性(例えば女性である、何歳である、何人である)にとらわれることなく人と人がつながることがスタンダードな世の中になること」です。

そして、そのことに関連しますが、「組織と人の関係が今よりもフラットになって、自然体の自分のままでも組織の中で生き生きとやれる状況が普通になること」です。今はまだまだ過去の時代を引きずっているところがあって、組織が上で人が従属するという関係が前提となっているような気がします。

川崎さん 私がなぜこの質問をマキコさんに聞きたかったかと言うと、最近私がすごく素敵だと思う人たちはみんな、夢をもっていて「まだいけるな!」と思っているからなんです。私たちの世代に期待しているよ、ということをよく言われますが、先輩方の輝いている姿を見ることで、もっと「自分たちもちゃんとやらなきゃ」と思えると思います。

誰もが夢をもって「まだいける!」「まだ大丈夫!」と見せてくれることによって、他の人たちは元気づけられると思います。5歳の子が頑張って自転車に乗っている姿を見れば「私も頑張らなきゃっ!」て思うものですし、90歳の方がオリンピックに出ると言っているのを聞けば、同じように「私も頑張らなきゃっ!」と思えるものです。持続可能な社会を作っていくにあたって、「もう遅いから」「まだ早いから」ということはないと思います。すべての人が役割を果たせると、私は思います。

篠田真貴子さん 株式会社YeLL 取締役 1968年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、米ペンシルベニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年10月にほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)に入社。最高財務責任者を務める。2018年11月に退任し、1年3カ月のジョブレス期間を経て、2020年3月からベンチャーの「YeLL」取締役に。
川崎レナさん 株式会社ユーグレナ 第2期CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者) 大阪府のインターナショナルスクールに通う15歳。趣味はミュージカル。2011年よりWWFユースメンバー、特定非営利活動法人JUMPのワークショップ選抜メンバーなどを務めるほか、アース・ガーディアンズ・ジャパンを創設しディレクターなども務めている。

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