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金星にも雷? 日本の探査機あかつき、謎の光を観測

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ナショナルジオグラフィック日本版

2020年3月1日、金星を周回する唯一の探査機である日本の「あかつき」が、金星の空に明滅する不思議な光をとらえた。この光は、40年にわたって人類が抱いてきた、ある疑問への答えをもたらすかもしれない――雲に包まれた金星に、雷はあるのか?

地球以外の太陽系内では、これまでに木星、土星、天王星の雲の中で探査機が雷光を検出している。厚い雲に覆われた「金星にも、雷があるはずだと考えています」。米ジョンズ・ホプキンス大学の惑星地質学者で、米航空宇宙局(NASA)金星探査解析グループ(VEXAG)の副会長を務めるノーム・アイゼンバーグ氏はそう語る。

あかつきが検出した光について、北海道大学の惑星科学者である高橋幸弘氏が、2020年12月に開催された米地球物理学連合(AGU)の年次大会で明らかにした。高橋氏のチームは、地球の雷の約10倍のエネルギーをもつ強力な雷か、大気中で爆発した大きな流星のどちらかだったと考えている。

この光は、あかつきに搭載された雷・大気光カメラによって撮影された。閃光(せんこう)が検出されたのは5年間の観測で今回が初めてだ。金星に雷があることを示す非常に有望な証拠だが、チームは今もデータを分析中であり、査読付き論文として発表するまではコメントを控えるとしている。

高橋氏の研究発表によれば、金星に雷があるかどうかについては何十年もの間、議論の的になっているという。

探査機がとらえた電磁パルスや地球上から観測された光など、金星に雷があると思われる証拠はこれまでにも発見されている。しかし、そのたびに科学者たちは、深宇宙の宇宙線ではないか、あるいは機材自体が発するノイズではないか、などと疑問を呈してきた。

今回検出された光の原因を特定するため、天文学者たちは再び同じような光を見たいと願っている。「大変興味深いですし、チームは他の可能性を排除するために必要な分析を行っています」とアイゼンバーグ氏は話す。なお氏は今回の研究に関与していない。しかし、「似たような光が再びとらえられるまでは、断定できません」

もし今回の光が雷だったなら、厚い雲に覆われた金星の謎を解く大きな一歩となるだろう。その謎には、金星に生命が存在しうるかどうかも含まれる。英オックスフォード大学の惑星科学者コリン・ウィルソン氏は、次のように話す。「(雷は)原子を分解し、分子を再結合させるフリーラジカル(非常に反応性の高い原子や分子)を生みます。そうして、雷が発生したのでなければ存在しないはずの分子が形成されるのです」

決定打ではなかった音や電波

科学者たちは半世紀近くの間、金星の雷を天体望遠鏡で探索したり、雷を示唆する電磁気の発生の有無を探査機でモニタリングしたりしてきた。地球上の雷ならば簡単に検出できるNASAの土星探査機「カッシーニ」は、土星に向かう途中、1990年代後半に金星の近くを2度飛行したが、光をとらえることはなかった。

しかし、もっと古い証拠ならある。1960年代から1980年代にかけて16号まで打ち上げられたソ連の金星探査機または着陸機「ベネラ」のいくつかは、不審な電波や音を記録した。1980年代には米国の金星探査機「パイオニア・ビーナス」が電界における活発なバースト現象を拾った。1990年には木星探査機「ガリレオ」が木星に向かう途中、観測装置に取り付けられた受信機で同様な信号をとらえた。また1990年代半ばには、地上の天体望遠鏡が、金星でのかすかな発光を複数とらえた。

「いずれも完璧と言えるほどの説得力はありませんでした」と、惑星の雷を研究する英ブリストル大学の物理学者カレン・アプリン氏は語る。「他の可能性を排除することが難しかったのです」

2006年から2015年まで金星を周回していた欧州宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナス・エクスプレス」は、金星から発せられる「ホイッスラーモード」の電波を多数とらえている。この種の電波をホイッスラー(口笛)と名付けたのは、第1次世界大戦中、無線機から聞こえてくる口笛のような音に気付いたオペレーターたちだった。地球上では、雷がホイッスラーモードの電波を発生させることがある。

しかし、「ホイッスラーモード波は、大気中のあらゆる不安定あるいは乱れた現象によって発生する可能性があります」と、米カリフォルニア大学バークレー校の惑星物理学者シャノン・カリー氏は言う。ホイッスラー波は金星や火星から日常的に発せられており、雷に由来する可能性はあるものの、断言はできない。

百聞は一見にしかず

目に見える光を探すという方法での探索は、ほとんど成果を挙げていない。「雷の源が雲の頂上よりも下にあるため、電波は雲の外に出たとしても、光の多くは遮断されている」可能性はあるとウィルソン氏は話す。

あかつきは金星の雲から逃れたかすかな光をとらえることができる。しかし、軌道を変えるメインエンジンの故障によって2010年に金星の周回軌道に入れず、太陽系を回って2015年に再試行しなければならなかった。2度目の挑戦は成功したものの、ほとんどの期間は金星から遠く離れた場所にいることになる長楕円軌道で妥協せざるを得なかった。

それでもその5年後に、あかつきは光の明滅をとらえた。「同じような光が再び見られなかったことには驚いています」とカリー氏は話す。「一度しか見られていないという事実は気になります」。雷は一度に複数、まとまって発生するものだからだ。しかし、「光が検出されたということ自体は信じています」

どうやら宇宙線によって引き起こされた光ではなさそうだが、あかつきのチームは火球、つまり大気中で爆発した流星だった可能性はあると考えている。とはいえ、火球現象が惑星で発生する確率についての現在の知見からすると、あかつきがとらえた光が火球だった可能性は非常に低い。

今のところ、最もあり得そうな原因は雷だ。

「機材のエラーによって偶然それらしいものが検出された可能性は大変低いでしょう」と話すのは、金星の雷に由来するかもしれない信号を研究している米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院生リチャード・ハート氏だ。今回の光は「金星に雷があるという説を強く支持するものです」

厚い金星の雲の謎

この光が雷だったとすれば、一体何が雷を引き起こしているのだろうか。この問いの答えを探す天文学者たちは、今回の発見は金星の空に関する知見に変革をもたらすかもしれないと考えている。

硫酸でできた金星の雲は太陽系でも独特であり、従来の雷生成モデルは当てはまらないとアプリン氏は言う。問題の一つは、金星の雲が比較的よく電気を伝えると考えられていることだ。これにより、電気が1カ所に蓄積できない可能性がある。

地球では、雲の中で暖かい空気が上に、冷たい空気が下に移動する対流の際に、電荷を帯びた氷の結晶やあられが上層と下層に分かれ、電気的な偏りが生じる。しかし金星の雲の中では、同様の現象がどの程度起こるかは明らかではないと、米ノースカロライナ州立大学の惑星科学者ポール・バーン氏は言う。また、あかつきは光があった場所の高度を測定できないため、たとえそれが雷だったとしても、高層大気とその何十キロも下にある雲の層のどこで発生したのかはわからない。

一つの可能性は、金星の雷は火山噴火の後に生成されるというものだ。厚い雲のためか噴火はまだ直接観測されたことがないが、状況証拠によって多くの惑星科学者が噴火は起こっていると確信している。噴火によって電気を帯びた上昇プルーム(噴煙)が生まれ、雷を生成している可能性があるという。

惑星科学者は金星に雷が存在するかどうかを知るため、今回検出されたものが本当に雷であるかどうかにかかわらず、これからも光を探し続けるだろう。

「雷はカリスマ的なプロセスです。アクティブだからです」とアイゼンバーグ氏は語る。「金星において、生物の材料となる化学物質を生み出す動力源の一つかもしれません」。つまり、雷のエネルギーによって、生命誕生に必要となる分子がつなぎ合わされる可能性があるということだ。もし、水があり、温かく、太陽光が当たる場所でこのプロセスが起きていれば、光合成微生物が生存できる環境があるかもしれない。

また、金星で最近検出されたとされるホスフィン(リン化水素)のガスは、雷が生んでいる可能性もある。ホスフィンは、地球上では微生物によって生成される化合物だ。ただし一部の専門家は、本当にホスフィンかどうか疑問視している。このガスが実際に金星雲に存在するとすれば、その一部は雷と大気の相互作用によって生成されている可能性がある。

地上の望遠鏡とあかつきによる二重の証拠があれば、雷があったことを関係者全体に納得させられるだろうとカリー氏は言う。対して、人類が金星に新たな探査機を送り込み、厚い雲の中に潜り込むか雲の頂上付近を飛行するまでは、雷の有無については議論の余地が残るとバーン氏は述べる。

地球とほぼ同じ大きさと組成でありながら劇的に異なる進化をたどった金星については、驚くほど知らないことが多い。今回検出された光は、「もう一度、金星探索に行く必要があるという論拠になります」とアイゼンバーグ氏は語った。

(文 ROBIN GEORGE ANDREW、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年1月5日付]

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