冬の料理の定番の鍋料理。鶏肉は欠かせない食材ですよね。今年の鍋物食材の価格をみると、魚や野菜が前年に比べ安くなるなか、鶏肉は高くなっています。2020年12月の鶏モモ肉の卸値は1キロ675円と前の年と比べ、およそ2割高でした。直近1月8日時点で713円とさらに高くなっています。7年ぶりの高値水準です。なぜ鶏肉はこんなに高いのでしょうか。
家庭消費は国産がほとんど
コロナウイルスの感染拡大による自粛で、魚も野菜も外食需要が振るいませんでした。さらに野菜は温暖な天候で豊作に、タラやブリも数年ぶりの豊漁でした。一方、鶏肉は国産に限っていえば外食不振の影響を受けませんでした。理由は市場構造にあります。鶏肉は他の食肉に比べ国産比率が高いのです。農林水産省によると2018年の鶏肉の自給率は64%。牛肉が36%、豚肉が48%なのに比べ、鶏肉は国産が主流です。しかも家庭の消費は国産がほとんど。一方、外食チェーン店で扱う鶏肉の多くは輸入品がメインになります。外食の需要が減っても、国産鶏肉の需給にはあまり影響しません。昨年春以降、外食自粛で家庭で料理を作る機会が増え、国産鶏肉の人気が高まり価格がじわじわ上がっています。
価格変動のパターン崩れる
鶏肉の最大の需要期は年末年始です。例年であれば、国産鶏肉の需要は夏に一回下がり、クリスマスや忘新年会のシーズンに上がるのがパターンです。ところが、グラフをみてもわかるとおり、20年は春にもいったん値上がりし、夏以降は値上がりを続けています。春に上がったのが最初の緊急事態宣言の影響です。
19年と20年の価格を比べてみても一目瞭然で、春以降の価格は一貫して20%程度上回り続けています。さらに11月に国内で3年ぶりに鳥インフルエンザが発生し、値上がりに拍車がかかっています。年が明けても鳥インフルにまだまだ警戒が必要です。1月7日に1都3県で緊急事態宣言も出ました。国産鶏肉は品薄が続く可能性があります。
今回の方程式はこちらです。
輸入鶏肉の値下がり=コロナ自粛で外食需要が低下
外食産業は今後も厳しい状況が続く可能性が高いです。年末の忘年会も減りましたし、新年会は緊急事態宣言を受け、さらに落ち込みが予想されています。一方で鳥インフルで国内鶏肉の供給が間に合わなくなり、国産品から輸入品に切り替える動きが出ています。1月の鶏肉輸入量が増えるのではないかとみられます。じつは輸入鶏肉は需給のバッファに使われているともいえます。国産の代替品として輸入鶏肉の需要が増えれば、値上がりする可能性もあります。
から揚げ店は好調
外食産業が全般的に苦戦する中、テークアウト専門店は健闘しています。中でもから揚げ専門店が目立ちます。2020年のから揚げの外食市場は前の年に比べ200億円増の1050億円。この3年間で2倍以上に、店舗数も2倍に増えています。揚げ物は油の後処理が面倒なため、手軽に買えるから揚げは人気になっているようです。
から揚げ専門店が増えている理由はお店側にとっても初期投資の低さが魅力です。揚げるだけでいいため、人件費もあまりかからず、低予算で済むため、比較的始めやすい。新規店舗以外にもコロナで営業ができなくなった居酒屋などが衣替えした店も増えてます。大手居酒屋チェーンのワタミも、から揚げビジネスに参入し駅前の商店街を中心に展開。3月までに100店に増やす予定だそうです。
(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)