高速連打に謎の回転 飼いネコ、不可解な行動の理由
人々はしばしば、ネコは奇妙な生きものだと考える。まるで人間の行動がとても合理的であるかのように。
あらためて考えてみれば、人間だって相当に奇妙な生きものだ。とはいえ、よき相棒のネコを理解するのに、しばしば手助けが必要になるのはたしか。そこで、ナショナル ジオグラフィックは読者の皆さんから、ネコの謎の行動についての質問を募集することにした。食事についての謎から突然走り回る「ズーミー」まで、さまざまな疑問が寄せられた。
蛇口から水を飲むのはなぜ?
米テキサスA&M大学獣医学教育病院の内科医デブラ・ゾラン氏によれば、流れる水に興味を引かれ、容器に入った水よりおいしいと感じるネコがいるという。
容器が清潔でなければ、ネコがその中の水をおいしくないと感じることもある。
また、ネコはひげが敏感で、「容器はもちろん、飲食時に何かに触れる」ことを好まない、とゾラン氏は取材メールに記している。容器が深く、水が十分入っていないと、このような状況になる。
米ペンシルベニア大学獣医学部の動物行動学者レナ・プロブースト氏はメール取材に対し、台所の流し台のような高い場所が「ネコに安心感を与える」のかもしれないと述べている。容器の置き場所が原因となっていることもある。家族が頻繁に通る場所だとネコは神経質になる。
草を食べる理由は?
「草や植物を食べることはネコの正常な行動と考えられています」とプロブースト氏は述べ、体内の寄生虫を減らす助けになっている可能性もあると説明した。これは野生だった祖先から受け継がれた可能性が高い。ネコの祖先は植物を食べることで、腸の中をきれいにかき出し、寄生虫などの侵入者を追放していた。
草は「胃腸の全般的な健康にとって重要な」天然の繊維でもあるとゾラン氏は話す。野生のネコ科動物は、獲物の胃腸に含まれる植物から繊維を摂取している可能性がある。
多くの人が室内飼いのネコに草を与えている。草を食べる量が急に増えたら、毛玉などが原因で胃の調子が悪化したか、多頭飼いの場合、不安の表れかもしれない。
なぜ扉などの平らな面を連打するのか?
人間の行動を観察し、ノックをしたら扉が開くことを学んだかのようなネコもいる。しかし、この質問をした読者の飼いネコは壁や食器棚など、ほかの平らな面で同様の行動を取っていた。
米タフツ大学カミングス獣医学部の名誉教授ニコラス・ドッドマン氏は、どちらも去勢手術を受けたオスネコのスプレー行動(マーキング)の特徴を見せているという。去勢されているため、尿は出ていないが、平らな面にお尻を向け、足踏みしながら尾を震わせるのはスプレー行動のしぐさだ。
『うちの猫が変だ!』(草思社刊)の著者でもあるドッドマン氏によれば、ネコが尿(見えない尿でも)でマーキングするのは「多くの場合、欲求不満や縄張りに関する不安が原因」で、縄張りの境界や餌が置かれている場所など、「戦略上、重要な」場所がたいてい選ばれるという。
また、ネコの足には臭腺もある。ただし、平らな面を足で連打する行動そのものはマーキングの主要な部分ではないとドッドマン氏は考えている。
天候が変化したとき、急に走り回るのはなぜ?
こうした爆発的な行動は「ズーミー(zoomie)」と呼ばれ、いつでも起こり得る。長いうたた寝の後、蓄えられていたエネルギーを発散させているだけだ。
ズーミーは季節の変わり目に激しくなると感じている飼い主もいる。たとえ室内飼いでも、ネコは根っからのハンターだ。飼い主が換気のために窓を開けると、「獲物の存在、新しい音、新しいにおいに刺激され、文字通り、壁やカーテンをよじ登るのでしょう」とゾラン氏は説明する。
キャットタワーのような構造物があれば、ネコは喜んでフル活用するだろう。
おなかをなでられるのがイヤ
おなかと尾の毛包(もうほう、毛根を包む組織)は非常に敏感なため、刺激が強すぎるのかもしれないとプロブースト氏は述べている。「ネコは頭部、特に顎下やほおを触られると喜びます」。この部分に臭腺が集中しているためだ。
ネコは仲間同士で顔をこすり合わせ、「互いのにおいを混ぜ合います。それが最終的に『コロニーのにおい』となり、どの個体が群れに属しているかがわかります」。ネコたちは飼い主にも同じようにあいさつしているのだ。
「飼いネコのボディーランゲージを読んでください。これが私からのアドバイスです」とプロブースト氏は話す。
ゾラン氏はこれに加え、ネコにはそれぞれの好き嫌いがあり、「何が好きかをためらいなく伝えてきます」と述べている。
まったくその通りだ。
(文 LIZ LANGLEY、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2020年12月28日付の記事を再構成]
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