農家の減少と高齢化は意欲のある担い手へと農地を集約し、規模を大きくするチャンスでもあります。農水省は14年に農地の賃貸を仲介する農地中間管理機構(農地バンク)を設立して集約を進めています。販売農家の1戸あたりの耕地面積は19年に2.5ヘクタールとなり、10年に比べ28%増えています。
ドローンを使った生産状況の把握や農薬の散布、トラクターの自動運転、膨大な情報を収集・分析するデータ処理など「スマート農業」と呼ばれる技術も発達してきました。農家に技術を提供する農業スタートアップも増え、電機大手など農業と関係のない分野の技術者が身を投じる動きも相次いでいます。
屋内で野菜を栽培する「野菜工場」も、あらゆるモノをインターネットでつなぐIoTや人工知能(AI)の利用で新たな発展段階に入っています。
貿易自由化は輸出を伸ばすチャンス
日本国内では人口減少が始まり、食料需要全体の拡大が見込みにくくなりました。海外市場を開拓することは日本の農林水産業を活性化させるうえで避けて通れない課題です。
2012年に4500億円だった農林水産物の輸出額は19年に9121億円まで増えました。アジアの所得水準が上昇し、和食や日本の食材への関心が高まったためです。
もっとも、ここにきて伸びの鈍化が鮮明で、19年の増加率はわずか0.6%。19年に輸出額を1兆円にするという政府の目標は達成できませんでした。最大の輸出先である香港向けがデモによる混乱などの影響で3.7%減少し、輸出先5位の韓国向けも日韓関係の悪化や日本の水産品の不漁で21.0%減少しました。
20年に入ってからの新型コロナウイルスの感染拡大により、アジアなど海外各国で消費の停滞が続く懸念もあります。商談会の開催や展示会への出展など海外でアピールすることも難しくなりました。日本からの輸出に再び弾みをつけるための戦略を練り直すべき局面が訪れています。
貿易自由化は日本の農業にとって試練であるとともに相手国への輸出を伸ばすチャンスでもあります。EPAでは欧州側における日本酒や牛肉の輸入関税が撤廃され、19年の日本からの輸出額はアルコール飲料が2割増え、牛肉が3割増えました。日本の食品の魅力を高めつつ、自由貿易の推進でチャンスを広げていくことが欠かせません。
(「Q&A 日本経済のニュースがわかる! [2021年版]」から再構成しました)