やめよう「睡眠不足」自慢 実は病気の可能性も

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/1/26
ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

収入や資産、学歴や会社、人脈、武勇伝、ファッションや容姿――自慢のネタはあまたある中でも、“寝不足”は日本人お得意の自慢話の一つだ。

「医学的には睡眠不足は病気なので自慢になりませんよ」と話すと「病気?」ときょとんとする人が多い。病気自慢というジャンルもあるので話がややこしいのだが、「寝ずにバリバリ仕事をしているのだから病気のわけがないだろう」「自分の意志で行っていることなのだから、期せずしてかかる病気とは違う」など反論が多く聞かれる。

病気と言えば、糖尿病や高血圧、認知症、がん、感染症などが頭に思い浮かぶ方が多いだろう。これらの病気と睡眠不足に違いがあるか、と言われれば、大した違いはない。

病気の定義は実は意外に難しいのだが、一般的には「心身の正常な状態が損なわれて、不調が生じた状態」とされる。睡眠不足を考えてみれば、その人の必要とする睡眠時間が不足し、その結果、眠気や倦怠(けんたい)感、消化器症状、頭痛、パフォーマンスの低下などさまざまな問題が生じているのだから、病気として何ら矛盾はない。

「いやいや、一晩グッスリ眠れば体調が回復するのだから、がんや生活習慣病とは違うだろう」。このように反論する人もいるが、2つの点で誤っている。

国際的な診断基準でも病気とされている

1点目は、眠れば症状が治るのだから病気でないというのならば、原因を解決すれば症状が消えるものは病気でなくなる。例えばアレルギー性鼻炎や熱中症も、花粉や熱暑を避ければ症状が治るのだから病気でないという理屈になる。

2点目は、そもそも一晩眠ったくらいでは睡眠不足の悪影響は十分に回復していない。寝だめをすれば眠気が消えるので治った気でいるが、慢性的な睡眠不足状態に陥ると、ストレスホルモンや代謝機能は週末の寝だめだけでは回復しないのである(「眠くない寝不足 『潜在的睡眠不足』の怖さ」)。

次のページ
やむを得ず睡眠不足になる人は少数派
ナショジオメルマガ