『FBI:特別捜査班』 男女バディが迫真シーンに躍動
2018年から全米ネットワークCBSで放送が始まると高視聴率を獲得し、人気シリーズになった「FBI:特別捜査班」。手がけたのは、犯罪捜査ドラマの金字塔といわれる「LAW&ORDER/ロー・アンド・オーダー」シリーズの生みの親であり、近年は「シカゴ・ファイア」などの"シカゴ"シリーズを大成功させたディック・ウルフだ。
タイトル通り、米連邦捜査局こと、FBIのニューヨーク支局を舞台に、テロや組織犯罪といった凶悪犯罪に挑む捜査班の活躍を1話完結で描く。
主人公のFBIニューヨーク支局のマギー(ミッシー・ペリグリム)はジャーナリストだった夫を亡くした過去がある女性。元警察官で射撃や格闘技も優れるエリート捜査官だ。相棒は通称"OA"ことジダン(ジーコ・ザキ)。元軍人でアラブ系アメリカ人の彼は潜入捜査の経験もあるタフな捜査官だが、剛直な性格のため周囲と対立しがちな面も持つ。
そんな2人の捜査を支える主なメンバーは、若き情報分析官のクリステン・チャザル(エボニー・ノエル)、主任特別捜査官補のジュバル・バレンタイン(ジェレミー・シスト)、そして主任特別捜査官のデイナ・モージャー(セーラ・ウォード)らだ。
人種のるつぼであり、政治、経済の中心である巨大都市ニューヨークだけに事件も多種多様で、その背景も複雑だ。第1話ではブロンクスで爆破事件が起こり、マギーとOAは現場に駆けつけるが、直後に第2の爆発が発生する。当初は地元ギャングたちの抗争と思われたが、事件の黒幕は思いもよらぬ人物だった……。
第2話以降も、金融街でランチタイムに次々と人々が不審死を遂げる事件や若い女性の大量刺殺遺体が発見される事件、さらにはミッドタウンで3人の男女が銃撃されるなど。毎回衝撃的な展開で、オープニングから画面にくぎづけになること必至だ。
全米では18~19年の新作ドラマで視聴者数ナンバーワンとなり、今も視聴率ランキングで上位の常連になっている本作。息の長い人気の秘密は、犯罪捜査ドラマの大御所ディック・ウルフの製作であることにほかならない。
代表作「LAW&ORDER」以来、スピーディーな展開でリアリティーにこだわる描写がウルフの作風だが、本作でもその期待を裏切らない。第1話で描かれるブロンクスでの爆破シーンをはじめ、事件現場はリアルそのもの。しかも、臨場感あふれるカメラワークで、まるで自分が事件の目撃者になったような気持ちに陥る。
また、他のアクション重視の捜査ドラマとは違い、立ち回りは派手ではないが、容疑者を追い詰めるやり取りなどはスリリングで、緊張感がみなぎる。一方で捜査官たちのプライベートが順を追って明らかになり、彼らのプロフィルが少しずつ肉づけされていく過程も面白い。
第1話はノオミ・ラパス主演のスウェーデン映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニールス・アルデン・オプレヴが監督。そのほかのエピソードも「LAW&ORDER」などウルフ作品常連の監督たちが手がけている。
DVDレンタルはvol.1~6までが22日から、vol.7~11が2月26日から開始となる。また、本作からは、スピンオフドラマ「FBI:モースト・ウォンテッド(原題)」が作られ、20年1月から全米放送が始まっている。
(「日経エンタテインメント!」1月号の記事を再構成 文/前田かおり)
[日経MJ2021年1月8日付]
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