非正規、孤立… 就職氷河期世代に「高齢貧困」の危機『就職氷河期世代の行く先』

新たな「不遇の世代」を生み出さない社会を考える
新たな「不遇の世代」を生み出さない社会を考える

「ロストジェネレーション」と呼ばれている就職氷河期世代が、30代後半から50歳の働き盛りを迎えている。非正規雇用や単身生活による孤立など暮らしのゆとりを感じにくい世代がこのまま高齢化すると、何が起きるのか――。自らも氷河期世代のエコノミストが、現状分析を踏まえてこれから取り組むべき支援策を提言しているのが、今回紹介する『就職氷河期世代の行く先』だ。コロナ禍に直面する次世代リーダーに、新たな「不遇の世代」を生み出さない社会のあり方を考えるきっかけにしていただきたい。

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下田裕介氏

著者は日本総合研究所・調査部主任研究員の下田裕介氏です。同社でマクロ経済研究センター国内経済グループ長のポストにも就いています。2005年東京工業大学大学院修了、同年三井住友銀行へ入行。06年に日本経済研究センターに出向したあと、08年に日本総合研究所に移りました。専門は内外マクロ経済、世代間問題で、現在は主に国内経済を担当しています。

「私は『就職氷河期とそうでない時期の両方を体験した』人間だ」。著者は本の最後で、こう自己紹介しています。大学を卒業した時の2003年春入社向け就職活動では、グローバル競争の激化やIT不況の直撃を受け、大卒採用が3年ぶりに減少していました。著者の専攻する理工系も、文科系も就職が難しくなりました。このときは大学院への進学を決め、2度目の就活を行った2005年春向け入社では、状況が好転していました。理工系の採用数が前年度比18.6%増と、売り手優位のなかでメガバンクに就職が決まります。

非婚と親の介護の重荷

本書は「就職氷河期世代」を1970~1982年生まれと定義しています。年齢は現在30代後半から50歳の人たちです。1990年代はじめにバブル経済が崩壊してからの「失われた10年」に就職期を迎えた人たちで「失われた世代」と呼ばれることもあります。

この世代の抱える問題は、かなり以前から顕在化していました。2003年に政府が打ち出した「若者自立・挑戦プラン」などでは、フリーターの常用雇用化、ニート(非労働力人口のうち家事も通学もしていない者)の自立化支援などが盛り込まれました。最近では、2019年の政府の「骨太の方針」に、国民の所得向上策の柱として、就職氷河期世代支援プログラムが提案されています。プラン具体化のために策定された「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」は「現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど、様々な課題に直面している方がいる」と指摘。「こうした課題は、個々人やその家族だけの問題ではなく、社会全体で受けとめるべき重要なものである」と記しています。

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