スイッチが入りにくい現代人の食生活

ところが、残念なことに現代人は、このオートファジーがしっかりと働いていない。そのため、細胞のおそうじが不十分となり、それが生活習慣病などのさまざまな病気の引き金になっている。オートファジーが起動しづらい原因は、糖質中心の栄養過剰気味な現代の食生活にあると著者のクレメント氏は指摘している。

mTOR(エムトア)はほぼすべての細胞(血液細胞以外)が持つスイッチだ。そのスイッチは、次のように作動する。mTORの働きが抑制されると「細胞の自己浄化モード」であるオートファジーが起動し、脂肪を燃焼させるだけではなく、細胞内に生じた有毒物質や増殖しようとしているがん細胞を除去する。逆に、mTORが活性化すると、「細胞の成長モード」に入る。このモードでは、タンパク質の生産、エネルギー(グルコースと脂肪)の蓄積、細胞の形成などが促進される(確かに人間には、脂肪を蓄え、タンパク質や細胞の生産を増やすべき時期もある。だがそのために、細胞修復や自己浄化のプロセスを抑制し続けるべきではない)。この「成長モード」(同化プロセス)の状態が極端に長くなると、病気にかかりやすくなる。そして現代の私たちの生活習慣は、まさにそれに当てはまる。
(第1章「イースター島と移植患者」p27)

mTORとは簡単に言うと、細胞が「成長モード」か「おそうじモード」かをコントロールする「切り替えスイッチ」のことだ。ひっきりなしに何かを食べていると、血糖値が常に高く保たれ、IGF‐1と呼ばれる成長を促すホルモンなどが分泌されて、細胞は成長モードになる。

人生では何事もタイミングが重要だ。同じく、物事には良い面と悪い面がある。私たちの身体が炎症やコレステロール、体脂肪を適切な時期に適切な量だけ必要とするのと同じように、ある程度のIGF‐1が生きるために必要だ。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしで、量が多すぎるとトラブルのもとになる。若く、成長の過程にあり、がんのリスクが低いとき、IGF‐1は成長や発達、ケガからの回復に役立つ良き味方になる。妊娠中や授乳中などの特定の状況でも、IGF‐1のシグナルをオンにしておく必要がある。(中略)
しかし、年をとるにつれて天秤は逆方向に傾いていく。特に中年期に差し掛かり、細胞の老化とDNAの突然変異が蓄積することよってがんになるリスクが高まり始めた頃は、IGF‐1シグナルを抑制し始めるのが賢明だ。
(第3章「低身長症と突然変異」p83)
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「朝食抜き」でオートファジーが起動する
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