2021/1/18

継続雇用制度の留意点

定年を70歳まで引き上げることや定年制自体を廃止するといった思いきった措置に踏み切る企業はまだそれほど多くないと思われるので、おそらく(3)70歳までの継続雇用制度の導入を検討する企業が多いと考えられます。

この場合、65歳までの継続雇用とどう違うかといえば、自社・特殊関係事業主に加えて他社も含まれるという点です。「特殊関係事業主」とはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、いわゆるグループ関連企業のことです。

これまでもグループ企業への出向や転籍などは、技術協力や雇用調整的な意味合いで行われているので、イメージしやすいかと思います。それが関連のない他社にも対象が広げられるということです。

他社で働く場合も、可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識、経験、能力などに応じた業務内容や労働条件とすることが望ましいとされていますが、どこまで対応されるかは企業によって変わってくるでしょう。

自社以外で継続雇用をする場合は、自社と特殊関係事業主・他社との間で、この法律に基づく継続雇用であることを契約に明記することが求められています。

もう一つの留意点として、無期転換ルールが挙げられます。無期転換ルールとは、同じ使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換できるものです。

適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局の認定を受けた事業主(特殊関係事業主を含む)のもとで、定年後に引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権は発生しません(65歳を超えて引き続き雇用される場合も同様)。

一方、これ以外の他社で継続雇用される場合、5年を超えて引き続き他社の事業主のもとで契約更新が繰り返されると、無期転換申込権が発生します。もし、本人がさらに長く働きたいと思い、無期転換の申し込みをすれば、期間の定めなく働くことも可能となります。

雇用によらない選択肢とは

高年齢者就業確保措置の選択肢には、業務委託契約で働くことなど、上記囲みの(4)(5)にある雇用によらない創業支援等措置も含まれています。

ただし、創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、過半数労働組合などの同意を得て、労働者に計画を周知する必要があります。これは企業側にとっても負担が大きいため、今のところはそれほど多く実施するとは思えません。

この措置が実施される場合、働き手は「労働者」には該当しないため、指揮監督下にあるなど労働者性のある働き方となっていないか留意する必要があるでしょう。

改正高年齢者雇用安定法における70歳までの就業確保措置は、あくまでも努力義務であるため、これを講じないことで企業に即罰則が科されるわけではありません。ただし、70歳までの安定した就業機会の確保のために必要があると認められるときは、ハローワークなどの指導・助言の対象となる場合があります。

65歳の就業確保措置も、努力義務から義務化された経緯があります。今後の労働力人口減少など社会情勢を踏まえると、将来的に義務化されることを踏まえたうえで、企業も対応を検討していくことになるでしょう。

何よりも私たち自身が、長期的にどのような働き方をしていきたいか、主体的に考えていくことがますます大切になっていきます。

佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開業、その後グレース・パートナーズ株式会社を設立し代表に就任。人事労務・社会保険面から経営を支援し、親身なコンサルティングで多くのクライアントから支持を得ている。また、出産後も女性が働き続けられる雇用環境の整備をはじめ、女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」(ソーテック社)。新聞・雑誌などメディアで活躍。