
まあ、おでんをメインとする老舗や有名店は、もっと高いところが多いから、それに対しては、リーズナブルと言えるのだろうが、大衆酒場のような「安さ」を求めて入ると、少しガッカリ感があるかもしれない。ここはあくまでおでんの新しさを楽しむ「おでん酒場」なのだ。
経営するのは、たこ焼き店「築地 銀だこ」を経営するホットランド。「なぜ、たこ焼き屋がおでん?」という疑問は当然だが、ホットランドは数年前から酒場業態の展開に力を入れている。

「銀だこハイボール酒場」がその第1弾。だが、すでに60店を展開している。その次として、白羽の矢を立てたのが、俳優の伊原剛志が創業して成功したお好み焼き・鉄板焼きの「ごっつい」。2018年10月に買収している。その後に開発したのが「おでん酒場」である「たけし」だ。
おでんは冬季商品としてのイメージが強いが、コンビニでは8月から9月にかけて、販売を始める例が多くなっている。通年商品に近づいているのだ。老舗や個人店でおでんを売りにする店は少なくないが、高価な印象がある。そこにチャンスを見いだしたのだろう。そして、おでんなら仕込みが容易で、現場調理を極力減らせる可能性がある。
ホットランドは、たこ焼きという商品をメインに全国展開した稀有(けう)な企業だ。ただし、既に国内で約460店を展開し、出店余地がなくなっている。そこで海外展開を図るとともに、国内では酒場業態を広げている。酒場業態を取りまとめる部門をギンダコスピリッツとして別会社にし、さらなる展開も意図している。「銀だこハイボール酒場」を大衆化した「銀だこ大衆酒場」や、ホットランドが持つ業態をフードホール風に集合させた「銀だこハイボール横丁」も出店してきた。

これまでおでんをメインにチェーン化した企業はない。その点、この挑戦には拍手を送りたい。ただ、まだ大繁盛とは行っていないことも事実だ。まあ、そんな堅苦しいことを言わず、おでんそのものを手軽に楽しむには、良い店と思う。特に、鶏だしで野菜を炊いたメニューは、とても良い。テークアウトにもなじむし、だしそのものを販売できる可能性を秘めている。
シチューっぽい「おでん」。一度試してみてはいかがだろうか。
(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)