投信選ぶ前にまず資産配分 投資成果の8~9割が決まる
未来の私を変える投資レッスン(4)
田丸磨音(たまる・まね)
メーカー勤務5年目の27歳。独身。先輩の影響を受けて資産運用に興味を持ち始めたが、投資初心者のため踏み出せないでいる。趣味はヨガ。
里中藤士(さとなか・とうし)
証券アナリスト、ファイナンシャルプランナー。35歳。最近、男性・女性ともに若い世代から資産運用に関する相談が増えている。趣味は家庭菜園。
第1回:株式ってファッション? 投資は女性にこそ向いている第2回:月1.7万円で1千万円めざす 投資するには若いほどいい第3回:さあ投資、でも損は怖い 「リスク」まず正しく理解
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磨音:これまでのレッスンで、今まで感じていた投資への不安がずいぶん減りました。早く投資を始めたくてうずうずしています。しかも、始めるなら、新しい年を迎えた今がいいかなと。でも、いざ始めるとなると、どこにお金を入れればよいかも、わからなくて。
藤士:それでは、いよいよ実践編に入りましょう! 投資を始めるには、まずは「証券口座」の開設が必要です。
磨音:証券口座って、証券会社に行ってつくらないといけないんですか?
藤士:いえ、行かなくても大丈夫です。もちろん、直接行ってつくることもできますが、パソコンやスマホでホームページやアプリから申し込みをすれば、本人確認書類のアップロードや郵送でのやりとりだけで開設できるところも多いです。ちなみに、運用対象が投資信託だけであれば、銀行や郵便局でもOKです。
磨音:お金があまりたまっていないので、窓口に行きづらいかなと思ってましたが、安心しました!
藤士:磨音さんのようにパソコンやスマホの操作に慣れ親しんでいる人であれば、ネット専業の証券会社が向いているかもしれません。投資の際の各種手数料もおおむね低いというメリットもありますしね。
磨音:なるほど! 早速口座開設します!
藤士:まあ、ちょっとだけ待ってください。口座開設するときに一緒にNISA(ニーサ)の口座も開設すると良いかもしれません。
磨音:「ニーサ」って何ですか? なぜ一緒に開設したほうがいいんですか?
藤士:NISAは「少額投資非課税制度」の略称で、投資で得た利益に対する税金が一定の投資額に限って非課税になる制度です。つまり、売却益や株式の配当金、投信の分配金といったものを得ても、税金がかからないということですね。
磨音:そもそも投資で得た利益に税金がかかることも知りませんでした……。普通はどれくらいかかるんですか?
藤士:利益にかかる税率は復興特別所得税込みで20.315%です。ちなみに、NISAには、「一般NISA」と「つみたてNISA」があって、表のように、投資できる額や期間、さらには投資できる対象まで異なります。1人1口座のみのため、どちらか一方を選んで口座開設することになります。
磨音:えっ、どちらか選ばなきゃいけないんですか? どっちがいいんでしょう?
藤士:どちらが合うかは、人それぞれです。磨音さんは投資の目的って決まりましたか?
磨音:はい。まずはマンションの頭金のために投資したいです。マンションは結婚してもしなくてもいずれは欲しいと思っていて。インテリアが大好きで、こだわりたいんです。
藤士:3年や5年後といった近い将来ではなく、もっと先のイメージで、これからお金をコツコツ準備していきたいということですか?
磨音:そうです! 今ある預金は何かあったときのために取っておきたいので。あ、もしかしてコツコツ積み立てるから、私には「つみたてNISA」が合ってますかね?
藤士:そうですね。個別株式銘柄を中心に投資したいということでなければ、磨音さんの場合には「つみたてNISA」のほうが今のところは良さそうですね。
磨音:つみたてNISAの投資枠は年40万円と先ほどの表にありましたが、毎月だと割り切れないですね、ひと月あたり3万3000円くらいでしょうか?
藤士:おっしゃるとおりです。ちなみに、マンション以外にもお金の準備は必要ですが、積立額はどうですか?
磨音:ちょうどこの年始に、結婚資金や老後資金と合わせて賞与のほか毎月5万円は積み立てようと考えていたところです。すべて投資にまわすのではなく、いつでも引き出せる貯蓄も持っていたいと思っています。
藤士:しっかりと金額まで考えられていて、これまでのレッスンの成果がでていますね!
磨音:そうですよ、おいしいもののことばかり考えているわけではないですからね! なんて、実はお正月に友達からの年賀状を見ながら、私も将来のこと真剣に考えなきゃって思ったんです。ところで、老後資金はiDeCo(イデコ)という専用の制度があると、このあいだ友達に聞いたので、今度、それも教えてください。
藤士:そうですね、iDeCoに関しては、お伝えしたいこともたくさんあるので、別途しっかりレッスンしましょう。
磨音:はい。ではまず、つみたてNISA口座の開設からですね。そして次ですが、投信はいつ、どうやって選べばよいですか?
藤士:投信の選び方もさることながら、選ぶ前にまず決めておくべきことがあります。どのような資産にどのような割合で投資していくかという「アセットアロケーション」です。資産を配分する割合を決めてから、それぞれの資産に応じた投信の商品を選び、あてはめていく順序です。例えば「きょうはワンピースで行こう」という方針を決めてから、具体的に「どのワンピースを選ぶか」という感じです。
磨音:なるほど! まず、投信の商品ありき、ではないんですね。
藤士:ちなみに、どのようなアセットアロケーションにするかで、投資成果の80~90%が決まるとまでいわれているんですよ。
磨音:そんなにですか! 具体的には、どんな資産を配分していくことになるんですか?
藤士:一般的には、大きく分けて、国内外の株式・債券といったものが挙げられます。前回、一般に株式はハイリスク・ハイリターン、債券はローリスク・ローリターンの傾向があり、それぞれ動きも異なるという話をしましたね。
磨音:覚えています。資産によってリスクとリターンの関係、つまり値動きが違うってことでしたね。同じファッションアイテムもコーディネート次第で違ってくるみたいに、組み合わせ次第で変わるんですね! その組み合わせ、私にはどんな組み合わせがいいんでしょうか?
藤士:では、次回は口座も開設できているでしょうから、各資産をどう組み合わせていくか? ということと、いよいよ投信を選んでいきましょう。
藤士のワンポイントアドバイス
NISAは、一般NISAか、つみたてNISAのどちらかを選ばなければなりませんが、一度どちらかを選んでも年単位で変更することができます。例えば、一般NISAからつみたてNISA、あるいはその反対でも変更できます。さらに金融機関の変更も可能です。ただし、一般NISAからの変更には注意点があります。それは「ロールオーバー」ができなくなることです。ロールオーバーとは、5年間の非課税期間が満了しても、その翌年分の非課税枠を利用してさらに5年間延長できる仕組みです。あくまでもロールオーバーは、同一の証券会社で、一般NISA口座同士の場合に利用できます。
「老後のためにも、若いときから投資・資産運用を」とよくいわれますが、初めての人にとってはわからないことだらけ。様々な疑問について会話形式でやさしく解説します。
中里邦宏
ファイナンシャルプランナー(CFP)、マネーディアセオリー株式会社取締役副社長。上場メーカーで設計担当後2004年にFP事務所を開業、16年に法人設立。顧客が納得するまでシミュレーションを繰り返すライフプラン相談を中心に、資産運用教育、ライフプランツールのプランニング、ロジック提供なども手がける。日本証券アナリスト協会検定会員、1級FP技能士、DCプランナー1級。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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