冬が旬といわれているカキ。西洋では「カキはRのつく月に食べよ」とされており、1月(January)は英語のスペルで「R」がつく、今はまさに食べごろである。しかし、今はバイオ技術や流通の発展でカキの世界もちょっと変化しているようである。また、カキは「あたりやすい」ともされている。果たしてカキはほかの貝に比べて食あたりしやすいのか。カキに関する素朴な疑問について調べてみた。
カキは貝類の中でも特別な存在かもしれない。カキの専門店「オイスターバー」はもはやレストランの一つのジャンルとして確立している。昨今では、産地でよく見られる、BBQスタイルでカキを焼いて食べる「カキ小屋」が首都圏にも登場。「アサリ小屋」とか「アワビバー」とか「ホタテバー」は存在しないのに、カキは専門店がある。それだけカキは人々をひきつける魅力があるということだろう。
ここでふと疑問に思ったのは、オイスターバーや首都圏のカキ小屋が通年で営業していること。Rのつかない春の終わりから夏にかけての月はカキを食べてはいけないのではなかったか!? 全国で26軒を展開する日本最大級のオイスターバーチェーンで、オイスターバー文化を日本に広めたゼネラル・オイスター(東京・中央)に話を聞いた。
「『Oyster should not be eaten in any month whose name lacks an “r”(Rのつかない月のカキは食べるな)』は昔から伝わる欧米のことわざです。真ガキの放卵から産卵までの時期がちょうど5月(May)から8月(August)まであり、その時期の真ガキは食べられないため生まれた言葉といわれています」(同社広報担当の高瀬繭さん)
カキのおいしさといえば、あのプリプリの食感と、「海のミルク」とも呼ばれるクリーミーで芳醇(ほうじゅん)な味わい。産卵後のカキは身も細くなり、身に含まれる豊富なビタミンやミネラルなどの栄養も失ってしまうのだとか。つまり、あのプリプリの食感や、豊富な栄養素から来るうまみもなくなってしまう。「R」のことわざは暑い時期に差しかかるので食中毒にならないための「戒め」だと思っていたが、それよりも「おいしくないから」というのが大きな理由のようだ。
しかし、これは真ガキに限った話。高瀬さんは「日本ではその時期でもおいしく食べられる『岩ガキ』もありますし、海水温が低く産卵時期がずれ込むことで出荷できる北海道産や岩手県産の真ガキもあります。また、『三倍体』といって、特殊な技術を用いて産卵をしない真ガキも開発されています」と続ける。