タイカン ターボS ポルシェらしいEV、洗練の乗り心地

2021/1/31
ポルシェ初のEV「タイカン」。最高性能モデルの「ターボS」の実力をワインディングロードで確かめた(写真:荒川正幸、以下同)
ポルシェ初のEV「タイカン」。最高性能モデルの「ターボS」の実力をワインディングロードで確かめた(写真:荒川正幸、以下同)
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ポルシェは並のクルマはつくらない。ブランド初の電気自動車(EV)として送り出された「タイカン」は、EVであると同時に第一級のスポーツサルーンでもある。ワインディングロードで味わえたのはあまりに濃密な「ポルシェらしさ」だった。

混迷の中で真打ち登場

最近EV周辺が騒がしい。もちろん“脱ガソリン車”を打ち出したリーダーたちの発言の影響だろう。自動車界の盛衰を見守ってきたクルマ好きの皆さんは心配無用だと思うが、トレンドに乗り遅れまいとする、あるいは何にでも“いっちょかみ”したい政治家の話には冷静かつ現実的に耳を傾ける必要がある。地球温暖化を抑止するために温暖化ガス削減に努力するのは私たちの義務だが、だからといって自動車という製品側だけで一気に変革を成し遂げられるものではない。カリフォルニア州がいわゆるZEV法を施行したのは今から30年も前のこと、京都議定書(COP3)が採択されたのは1997年だった。紆余(うよ)曲折の末にようやくここまで来た、というのがそれ以前からいわゆる業界を見続けてきた私の実感である。

各国の政策やエネルギーミックスについてここでは述べないけれど、蛇足ながらひとつ言いたいのは、一見分かりやすい決めつけ論には注意すべきだ。EV至上論はもちろん、モーターとバッテリーさえあれば、誰でも自動車をつくれる時代がやってきたというような、短絡的すぎる意見も同様だ。安全性を担保しなければならない市販車が簡単に組み立てられたら誰も苦労しないというものである。努力しても最適解を得るのは容易ではない。大人だったら皆、身に染みて分かっているはずだ。

フランクフルトモーターショーに現れた「ミッションE」からほぼ5年、ポルシェのEV「タイカン」が現実の製品となって登場した。取り上げたのは「4S」と「ターボ」、そして「ターボS」と3モデル用意されているうちの最強力バージョンのターボSである。無論ピュアEVなので本当にターボチャージャーが備わるわけではなく、あくまで最高性能モデルの象徴としてのネーミングである。

試乗車は「ポルシェ・タイカン」のトップパフォーマンスグレード「ターボS」。前後車軸のモーターが生み出す最高出力は761PS(オーバーブースト時)にも達する
ポルシェらしいリア下がりのルーフラインが印象的だ。トランクリッドにはアクティブスポイラーが備わるが、写真の通り展開する高さはごくわずか

ポルシェにふさわしい完成度

タイカン ターボSはポルシェに期待する気持ちに一分の隙もなく応えてくれる。車検証記載値で2380kg(前後重量配分は49:51)もあるヘビー級のボディーは滑らかに見事に動き、ゆっくり流そうが、山道で飛ばそうが、思いのままに、というより予想を超えて鋭く、かつ洗練されているのだ。

当然ホイールベース間に配置されるリチウムイオン電池の容量は93.4kWhでシステム電圧が800Vと高電圧なのが特徴。これは軽量化と充電時間短縮にメリットがあるというが、充電については後述する。一充電航続距離は最大416km(WLTPモード)とされている。前後アクスルに各1基備わる交流同期モーターを合わせた最高出力は625PS(460kW)だが、ローンチコントロール作動の際のオーバーブースト時には761PS(560kW)にまで引き上げられ、同じく最大トルクは1050N・mと途方もない。0-100km/h加速は2.8秒、最高速は260km/hという。0-100km/h加速2.5秒を豪語する現行型の「テスラ・モデルSパフォーマンス」にはまだ乗ったことがないが、それ以前のモデルに比べて特にダイナミック性能の完成度が高いのは間違いない。

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