愛の不時着でドラマ席捲 スタジオドラゴンが売る世界
ネットフリックスオリジナルシリーズ「愛の不時着」の大ヒットで、一躍日本でも注目を浴びる韓国のドラマ制作会社「スタジオドラゴン」。総合エンタテインメント企業CJ ENMのドラマ事業部からスタートし、2016年5月に子会社として設立。現在は、年間約30本のドラマを量産する韓国最大のドラマ制作会社だ。
19年の年間売上高は4687億ウォン(約432億円)。うち海外が1604億ウォン(約148億円)を占め、前年比で45.5%増。日本のドラマの海外輸出額は全体で33.1億円(18年度)だ。さらに17年から20年までの海外売上高のCAGR(年平均成長率)を58%と予測。特に目を引くのが、145%のCAGRを見込むグローバルOTT(オーバー・ザ・トップ)。OTTとはネットフリックスなどのネット配信動画サービスを指す。
スタジオドラゴンが事業の核に据えるのが作品やフォーマットの販売、リメイク契約などのグローバル戦略だ。19年にネットフリックスは同社株を5%取得し、CJ ENMに次ぐ大株主になった。グローバルOTT事業がドラマの普及だけでなく、膨らむドラマ制作費の新たな収入源となった。20年には米国支社も設立。「最終的には海外市場でも独自の企画開発や制作、流通、IP事業の展開を計画している」(スタジオドラゴン)。
既にIUとヨ・ジングの2大スター共演の「ホテルデルーナ~月明かりの恋人~」(19年)で「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」などを手掛けた米制作会社、スカイダンス・メディアとの初の共同制作プロジェクトが進む。リメイク制作には、両社が均等に参加していく。
同社はグローバルで通用するドラマ制作について「今の時代は、世界中共通の動画配信サービスが普及し、国や民族性による嗜好がフラット化している。むしろ、国境を越えて年齢・価値観・嗜好が似ている人が特定のドラマを好む傾向にある」と語る。
同社はコンテンツ企画・開発から資金調達、プロデュース、流通まで自社で手掛ける。加えて、韓国を代表するヒットメーカーを含む226人のクリエーターが所属しているのも大きな強みだ。「社内に演出家や作家、プロデューサーを多く抱えることで、ドラマを量産できるだけでなく、形式にとらわれず新しい試みにチャレンジできる体制がある」
現在、ナム・ジュヒョク主演の「スタートアップ:夢の扉」が韓国での放送と同時にネットフリックスでの配信を始め、ネットフリックスオリジナルシリーズ「Sweet Home‐俺と世界の絶望‐」も配信中だ。韓国では、ナムグン・ミン主演の殺人推理サスペンス「昼と夜」、日本でも人気の韓国WEBマンガを原作とした「女神降臨」、フュージョンコミック時代劇「哲仁王后」など、バラエティー豊かな作品が放送されている。21年に韓国ドラマがどう世界に根を深く下ろしていくのか、今後も目が離せない。
(「日経エンタテインメント!」12月号の記事を再構成 文/横田直子)
[日経MJ2020年12月25日付]
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