――商社時代も服装に気を使う方でしたか。

「兄と弟は大の服好き、しかもポール・スミス好きなのですが、私は伊藤忠に入社するまでまったくおしゃれに興味がなかったのです。入社後、繊維配属となりましたが最初の10年は原料を担当し、スーツはいわば制服。それも安い方がいいやろうと、格安スーツに1万円しない靴で通しました。その後ブランド担当になりまして」

スーツはサイズが命 誰でも数倍スマートに

――ランバンやポール・スミスなどラグジュアリーブランドを担当するようになって目覚めたのですね。

「30代で最初に出合ったブランドがランバン。もう高くて、びっくり。値引きしていただいても、ボーナスが全部飛んでいく。でもパリに行き、お客さまやデザイナーと触れあい、次第にファッションの世界に深く入り込んでいくと、高級ブランドのどこが違うのかが分かってくる。そして、そうした服を着るのはどんなお客さまなのか、どう着こなしているのかを観察しました。究極的に私らの商売は、お客さまにどうやったら似合うものをおすすめできるかなんです。似合えばだれかにほめられる。ほめられるとうれしくなってまた買う。服に愛着がわく。これや、と納得したんです」

――ご自身の服装へのこだわりは、年齢とともにどう変わりましたか。

「中堅で頑張っている30代は人と違うものが着たい、とポール・スミスにどっぷりはまっていました。40代は反対にシンプルなものを着たくなり無地のスーツ、無地のシャツ、ソリッドなネクタイを愛用していました。いまは、社長として恥ずかしくない身だしなみを意識しています」

「フィット感のあるサイズのスーツを着たら、どんな人だってカッコよくなるんです」

――伊藤忠では繊維畑出身の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)もウェルドレッサーです。

「岡藤さんの前と後では明らかに役員の服装が変わり、ぐっとおしゃれになりました。岡藤会長を見ていてとにかく感じるのが、ものすごく姿勢がいいということです。だから上着のラインがさーっと流れて、スーツが映える。服を美しく着るにはああでないといけません。そういう目線で公開された写真をいつも、じーっと見ているのですが、常にきれいに立っている。テレビでもいいなと思うのは、スーツをきちんと、きれいに着ている人です」

――目立つのはお笑いの人。スーツスタイルをおしゃれに着こなす人が増えていますよね。

「声を大にして言いたい。スーツは体形をカバーしてくれるんです。きちんとフィットしたサイズのものを着れば、どんな方でも間違いなく数倍スマートにみえるんですよ。世の中のビジネスマンの多くは、本当にサイズ感の合わないスーツを着ているんです。売る側も体のラインに沿ったもの、もしくは、沿うようにお直しをアドバイスしてあげることが大切です」

――フィットしたスーツをびしっと着ている中高年はすてきに見えますよね。

「そう。若い頃は安いものをぐるぐる着回すのもいい。でも中高年には年相応の良質な素材を感じていただきたい。ええもんを着ると愛着がわく、大事にする。大事にすることはサステナビリティー(持続可能性)につながる。ここがファッションで重要なことなんです」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


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