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ボルドーにあって、とりわけ知名度が高くない生産者や若手の生産者の間で、市場の変化に柔軟に対応する動きが徐々に広がりつつある背景もそこにあり、新しいスタイルのボルドーワインを生んでいる。

わかりやすい例が、主要品種以外の品種を主体としたワインだ。ボルドーの赤ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンかメルロ、あるいはその両方をメーンに、補助品種と呼ばれるカベルネ・フランやマルベック、プティ・ヴェルドなどを少量ブレンドするのが一般的だ。だが、近年は、補助品種を主体にしたワインが好奇心旺盛な愛好家の注目を集めている。

「シャトー・ルクーニュ カルメネール」(2014年産の参考小売価格3300円)もその1つ。カルメネールは、ボルドーの黒ブドウの全作付面積に占める割合が0.05%と非常に少なく、補助品種としてすら、あまり使われてこなかった。

補助品種、カルメネールを用いた赤ワイン「シャトー・ルクーニュ カルメネール」(2014年産の参考小売価格3300円)

補助品種がその地位に甘んじてきたのは、おいしいワインにならないという理由では必ずしもない。例えば、プティ・ヴェルドが補助品種なのは、実が熟すのが遅いという欠点があり、栽培する生産者が少なったから。今は栽培技術の進歩や地球温暖化の影響で成熟時期が早まっており、栽培面積が増え、プティ・ヴェルドを主体としたワインも生産されている。

カルメネールも、補助品種にとどまったのは、今より涼しい昔のボルドーの気候に合わなかったのが理由の1つとされている。その証拠に、ボルドーより温暖なチリでは、主要品種の1つとして人気がある。マルベックも、アルゼンチンでは国を代表する品種だ。シャトー・ルクーニュのカルメネールは、口当たりがまろやかで飲みやすい。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロとはまったく違う味わいの印象だ。

ナチュラルワイン・スタイルのボルドーワインにも、注目が集まる。ナチュラルワインは、有機栽培のブドウを使い、培養酵母でなく天然酵母で発酵させ、酸化防止剤を極力添加しないワイン。大西洋に近く湿気の多いボルドー地方は有機農業には不向きなため、ナチュラルワインはほとんど造られてこなかった。しかし近年は温暖化や栽培技術の進歩で、有機農業の環境も徐々に整い、ナチュラルワインの醸造が増えている。

ナチュラルワイン特有の喉越しが心地よい「シャトー・ル・ピュイ エミリアン」(2017年産の希望小売価格6200円)

おすすめは、「シャトー・ル・ピュイ エミリアン」(2017年産の希望小売価格6200円)。ル・ピュイは400年の歴史を持つ老舗ワイナリーで、ボルドーでは珍しく昔から有機栽培を実践してきた。メルロが主体で、天然酵母で発酵させ、熟成時に少しだけ酸化防止剤を加えてある。非常に芳醇(ほうじゅん)、ふくよかなワインで、ナチュラルワイン特有のスルッとした喉越しが、心地よい。

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