
僕が歌った曲は、『アナと雪の女王2』から『イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに』。未知の世界に行くという歌ですが、まさに20年はそういう1年でした。今の時期にぴったりの曲です。『キンキーブーツ』から『ノット・マイ・ファーザーズ・サン』。『プロデューサーズ』で共演した大野君とは『出来るさ!』をデュエット。初めてお会いした平原さんとは『天使にラブソングを2』から『ジョイフル・ジョイフル』。『RENT』からの『シーズンズ・オブ・ラブ』は中川君、平原さん、加藤君、大野君と一緒に。1年間のいろんな思いが胸をよぎりました。
ニューヨーク在住の演劇ジャーナリスト・影山雄成さんとのリモート対談や、ニューヨーク・ポスト紙にコラムを執筆されている演劇ジャーナリストのマイケル・リーデルさんのインタビュー映像では、ブロードウェイの劇場再開の見通しをうかがいました。5月末までの閉鎖が発表されていますが、ワクチンが十分に行き渡るまで再開できないとなると、再開は21年後半から22年になるという見方もあるようです。再開後はチケット価格を下げるなど劇場の収入システムの見直しが必要だという意見もあり、日本とはまた違う事情に考えさせられることも多かったです。
自分たちができることをしっかりと
MCとしてゲストの話を聞く役割も大きかったのですが、僕にとってはありがたいことでした。普段からいろんな人と会って話を聞きたいけど、今はなかなか集まれないし、食事にも行けません。なので番組を通して、久しぶりに会えるのは願ったりかなったりです。平原さんのように、初めてちゃんとお話できたのもうれしいし、『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』でビリー役を演じた4人の子役とも初めて会えました。僕は見に行けなかったのですが、コロナ禍でもレッスンを重ねて、素晴らしいパフォーマンスをお客さまに披露してくれていたのだと思うと、それだけで胸がいっぱいになりました。
みんなと会って感じたのは、やっぱりミュージカル俳優は前向きで、明るい人たちだということ。特にこれから幕が開く作品で、今はけいこ中というカンパニーから来てくれたゲストの方々は、新型コロナの感染状況がどんどん変わっているから、不安だったり、先が見えづらかったりすると思います。そんななかでも、自分たちができることをしっかりやろうという姿勢は、誰もが同じでした。話を聞いたり歌を聴いたりして、僕も励まされたし、願わくばすべてのカンパニーが完走できますように、と祈る気持ちになりました。

(日経BP/2700円・税別)

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第85回は2021年1月16日(土)の予定です。