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挑戦してダメでも現状のままでも、先はない

それまで結城酒造の主力商品だった普通酒は、冠婚葬祭用の需要が年々細り、売り上げが減少していた。「このままだと先がない、何とか変えなければと主人も私も思っていました。冬しかお酒は造れない。小規模の蔵元で最新設備もない。同じ量しか造れないなら、いいお酒を造っていこうと決めました」

普通酒をやめ、特定名称酒といわれる本醸造クラス以上の日本酒に切り替えたのだ。「急に新しいお酒に変えても販売先がないし、売り上げを支えていた普通酒をやめる決断にはすごく勇気がいりました。でも、新しいことに挑戦してダメでも、現状のままでも、どっちにしても先はない。方向性ははっきりしていたので迷いはありませんでした。3~4年かけて完全に切り替え、現在は普通酒はゼロです」

3年目からは美智子さんが製造責任者、杜氏となった。「結ゆい」は、酒販店が別の酒販店を紹介してくれたり、飲食店が酒販店を紹介してくれたりして、都内をはじめ首都圏に口コミで販路を増やしていった。「営業に回って断られるという経験はほとんどなく、人とのご縁でお取引先が増えていきました。本当にありがたいことです」

コロナの自粛期間中はオンラインの酒蔵ツアーを実施。「こういうときだからこそできる発見がありました」

「自分がおいしいとか楽しいと思わないとなかなかしんどい仕事なので、興味のあるものはどんどん造っていきたいんです」。北海道に行って、北海道の酒米を使ったお酒を飲んだらおいしかったので造ったのが、北海道産の酒米を使った「結ゆい」。ほかにも青森産の酒米や、岡山の特定農家産の雄町を使った「結ゆい」など、新しい商品を次々送り出している。評価も高まり、全国新酒鑑評会では2017年(平成28酒造年度)から2年連続で金賞を受賞した。

猛勉強して「常陸杜氏」に 勉強に終わりはない

19年には、茨城県酒造組合が新設した認証制度「常陸杜氏」にチャレンジし、みごとに初代3人の1人に選ばれた。「資格がなくても製造責任者にはなれるんですが、茨城で生まれ育ってお酒の勉強もさせてもらったので、絶対に合格したいと思いました」。常陸杜氏の認定試験を受験するには酒造技能士1級の国家資格を持っていること、酒造の経験年数、コンテストの受賞歴などいくつもの条件があり、試験は利き酒、筆記試験、小論文、面接。「こんなに勉強したのは初めて。大変でした」という。

日本酒造りの勉強は終わらない。現在も、夏季には杜氏を対象にした研修を受けて技術を磨いている。「より品質のいいものを安定して造れるように精度を上げたいですね。技術の研さんと、自分の励みになるのでコンテストにも引き続き挑戦していきたいです」

農家とのネットワークもでき、特定農家の酒米による純米酒造りにもさらに力を入れていきたいという。また、3年前からは地元・結城産の食用米を使った酒造りも始めている。「茨城県産の酒米は数量が限られているので、食用米でいかにいいお酒を造るかに挑戦したいですね。地元の素材を生かしたものを造っていきたいです」

(取材・文 秋山知子=日経ARIA編集部、写真 都築雅人)

[日経ARIA 2020年11月30日付の掲載記事を基に再構成]

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