迫る「2025年の崖」に向け、何を学ぶか

西山さんがあげたもう一冊は、日経コンピュータ・山端宏実・岡部一詩・中田敦・大和田尚孝・谷島宣之『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』(日経BP)。みずほフィナンシャルグループ(FG)のシステム統合の苦闘の軌跡を、IT専門誌の「日経コンピュータ」が取材を通して解き明かした内容だ。こちらは20年前半に一番売れたビジネス書というのが西山さんの推薦理由だ。

ビジネスノンフィクションとして面白く読めるのはもちろん、ここには多くの日本企業がくみ取らねばならない学びがある。2018年度の時点で、日本企業の基幹系システムの22.3%が21年以上使い続けられているという。いわゆる「2025年の崖」問題だ。本書が克明に追った苦闘は、これから多くの日本企業が直面せざるを得ない課題といえるだろう。2度の大規模システム障害を引き起こしたみずほFGがどのように社内を立て直し、巨大システム開発プロジェクトの成功にたどり着いたか。そのプロセスは一読の価値がありそうだ。本シリーズの記事「みずほFGのシステム統合 苦闘の19年追う迫真のルポ」も参考にしてほしい。

経済学をビジネスに応用

三省堂書店有楽町店の岡崎史子さんのおすすめは『メカニズムデザインで勝つ』と『豊田章男』

売れ筋の本とは違って見逃しがちな本を2冊選んでくれたのは、三省堂書店有楽町店の岡崎史子さん。ひとつはこのシリーズでは取り上げる機会のなかった坂井豊貴、オークション・ラボ『メカニズムデザインで勝つ』(日本経済新聞出版)、もうひとつは片山修『豊田章男』(東洋経済新報社)だ。

メカニズムデザインとは、経済学者が理論を応用して新しい制度を設計すること。それをビジネスの世界などで活用することを目指す。坂井氏はその専門家で、オークション・ラボは不動産オークションを手掛けるデューデリ&ディール(東京・千代田)の今井誠取締役が坂井氏と協力して開いている「経済学×ビジネス」の月例ワークショップだ。

そのワークショップの模様を本の中でライブ感たっぷりに紙上再現する。「今年のノーベル経済学賞で受賞対象になったオークション理論などをビジネスに応用するおもしろさをワークショップに参加しているような臨場感で伝えてくれる」と岡崎さんは話す。

一方の『豊田章男』はパナソニック、ソニー、ホンダなど日本企業を題材に数々の本を書いてきたベテランジャーナリストによる評伝だ。本シリーズでも6月に紹介した(参考記事「豊田章男氏とは何者か 人間像に迫るノンフィクション」)。多面的な豊田氏の実像を探るべく綿密な取材で丹念にエピソードを拾い上げ、「1人の男の苦悩と成長のドラマ」に迫っていく。「ちょうど緊急事態宣言が出ていた期間に発売されて売り時を逃した本。日本を代表する企業の経営者を扱った本格的なノンフィクションで、もっとたくさんの人に読んでほしい」とは岡崎さんの推薦の弁だ。

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