働く人が出資も経営も 新しい働き方、若者つかめるか

水野児童館では職員(右)が出資も経営もする(2020年10月24日、埼玉県狭山市)=協同総合研究所の荒井絵理菜さん撮影
水野児童館では職員(右)が出資も経営もする(2020年10月24日、埼玉県狭山市)=協同総合研究所の荒井絵理菜さん撮影

働く人が出資も経営も兼ねる「労働者協同組合」という組織が法律に基づいて作れるようになりました。2020年12月に成立した議員立法によるもので、企業による雇用とは異なる「協同労働」という働き方の普及を目指しています。

協同労働は西欧などでは19世紀から普及し、日本でも法律に先立つ実践者がいます。その1つである日本労働者協同組合連合会(東京・豊島)は19年度の就労者が約1万6000人と9年前から3割増えました。加盟組織でどんな働き方をしているのか、埼玉県狭山市の市立水野児童館を訪ねました。

高校生まで利用できる児童館では9人が働いています。一見して変わったところはありませんが、所長の朝賀咲子さんによると、勤め始めるには5万円の出資が要るそうです。辞めるときには戻ってくるそうですが、普通の働き方とは違います。

さらに違うのは仕事の決め方です。イベント内容から誰が何時間働くかまで、全員による話し合いで決めています。「物品購入からホームページの更新まで全部自分たちで判断している」(朝賀さん)。他の職場から転職してきた20代の女性は「上下関係がないので職員同士のコミュニケーションがとりやすい」と話していました。

生計の面では厳しさもあります。もう1つの全国団体、ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(東京・新宿)では、約7000人のメンバーで年収400万円以上は1%しかいません。60代以上が52%と高齢化も進み、代表の藤井恵里さんは「法制化を機に事業性を高め、若者による設立も促したい」と話しています。

法律により、3人以上の届け出だけで協同労働が始められるようになりました。手間のかかる認可手続きなどが必要だった企業組合やNPOと違う点です。エール大の成田悠輔助教授(経済学)は「新しい選択肢が生まれるのは良いことだが、若者を巻き込むならインターネット上の様々な集まりが競争相手になる」と指摘しています。

例えば、13年に立ち上がった「NEET(ニート)株式会社」。就労にも教育にも従事していない若者らが1人年3000円の株式を買い、運営しています。約100人の株主は全員が取締役で、指図する上司はいません。

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藤井恵里・WNJ代表「主体的に働く面白さを実感」