――フェイクメディア対策の研究プロジェクトでは何を研究するのですか。

「研究対象として3タイプのフェイクメディアを想定しています。本物に限りなく近いが本物ではない『メディアクローン型』、世論操作などを目的に意図的に編集・生成される『プロパガンダ型』、そして人間には識別困難だがAIを誤動作・誤判定させてしまう『敵対的サンプル型』です。社会科学を含め様々な専門の研究者が参加して4つの分野で研究を進める計画です」

「高度なフェイクメディアを生成する技術の研究から始めます。フェイクメディアへの対策をとるには、まず生成技術を確立する必要があります。顔や身体などの映像、音声、文書など多様なメディアについて研究します。2番目がフェイクメディアに対抗する検知・防御技術の開発です。単にフェイクかどうかを判断するだけではなく、どのような意図でフェイクが作られたかを説明可能な形で示します」

「3番目はフェイクメディアを『無毒化』する技術の開発です。機械学習AIが誤動作したりしないよう、学習データを偏りのないものにすることなどを考えています。4番目が『インフォデミックを緩和し多様な意思決定を支援する情報技術』の開発です。フェイクメディアの生成・検知技術や無毒化技術をいかし、人々が偏りのない意思決定ができる社会の仕組みを研究します」

――人々が偏った意思決定をしないよう、どのような手段を使うのですか。

「難しい課題です。閉鎖的な情報空間でコミュニケーションを繰り返すことで偏った考え方が強まるエコーチェンバーという現象が知られています。これを防ぐには、判断材料となる情報を幅広く受け手に与えるのがポイントではないかと考えています。フェイクらしい情報があるとき、その可能性を教えてあげたり、あるいは異なる見方にたつ情報を同時に提示してあげたりするわけです。最終的に判断するのは人間ですが、様々な情報に接する機会を意図的に作ることでエコーチェンバーを避けられると思います」

「また、ツイッターのようなSNSでは反射的にリツイートをしがちですが、一定時間が過ぎないとリツイートできないような仕組みを取り入れて、SNSユーザーに熟慮する時間を与えるというアイデアもあります。プロジェクトでは1000人規模くらいの実験用SNSを構築して、行動実験をすることも考えています」

(編集委員 吉川和輝)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら