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超巨大氷山、ペンギンやアザラシの島に大接近 影響は

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ナショナルジオグラフィック日本版

ペンギン、アザラシ、そして絶滅の危機にあるシロナガスクジラの小さな群れが生息する南極地方の野生生物保護区に、最大級の氷山が接近している。

A68と呼ばれるその氷山は、2017年に南極半島の東海岸にあるラーセンC棚氷から分離してできた。以来、ゆっくりと北に向かっていたが、今年に入って海流にのり、速度を増して南大西洋を進んでいる。

長さ約150キロメートル、最大幅約50キロメートルにもなるA68氷山の面積は約4000平方キロメートル(滋賀県の面積にほぼ相当)に及び、水中部分は150~180メートルもある。衛星画像を見ると、人さし指で何かを指さしているような形をしている。

この氷山は2020年12月現在、南大西洋に浮かぶ英領サウスジョージア島から約45キロメートルのところにあり、科学者たちは数日中に島のまわりの浅い海域で引っかかって止まるか、通り過ぎていくと予想している。氷山の動きが止まった場合、どのくらいの期間、そのままの状態でその場にとどまるかは不明だ。

「今後、氷山が北上する可能性は常にありますが、一定期間その場所にとどまる可能性もあります」と、米国立アイスセンターの南極主任アナリストであるクリス・レディンガー氏は言う。「最も確率が高いのは、島の南の海域を流れていくことです」

レディンガー氏によると、最近の衛星画像は氷山が分裂しはじめていることを示しており、科学者たちは氷山が次にどうなるかを熱心に見守っているという。

「こうした氷山についての科学的な情報はあまりありません」と、英国南極調査所の生態学者であるジェレイント・ターリング氏は言う。氏はA68氷山ができた過程は自然現象だと言うが、地球温暖化、特に氷山を生み出した南極地域の気候の温暖化を考えると、それは「ほんの序の口」にすぎないかもしれないと考えている。

A68氷山はどのようにしてできたのか

南極半島は地球上で最も急速に温暖化が進んでいる地域の一つであり、半島の東海岸沿いではいくつもの棚氷が崩壊しつつある。南極半島の北端近くにあったラーセンA棚氷は1995年に崩壊した。その南側にあったラーセンB棚氷が2002年に崩壊する様子は、衛星画像によって捉えられ、人々に衝撃を与えた。

その次に崩壊したのがラーセンC棚氷で、3つの棚氷の中では圧倒的に大きい。2010年に現れた大きくて深い亀裂は、その後も成長を続け、2017年7月についに分離してA68氷山が誕生した。A68はこのとき、米デラウェア州に匹敵する約5700平方キロメートルもの氷の塊で、大きさは元の棚氷の約1割に相当した。

A68氷山は、2017年中はあまり動かなかったが、2018年から北上しはじめ、米ブリガムヤング大学の追跡記録によると、何度か回転した後、2019年には南極半島の東のウェッデル海をふらふらと北上し、やがて南極環流という南極大陸沖を西から東へ時計回りに進む強い海流にのった。

A68ほどの氷山になると膨大な重さがあり、海中部分も非常に大きいため、進むにはかなり強い海流を必要とすることが多い。2020年には、A68は北と東にジグザグに進み、時折回転しながら、じわじわとサウスジョージア島に近づいていった。

「おそらくこれ以上、島に近づくことはできないでしょう」とレディンガー氏は言う。「あの辺りの海の水深は約150メートルで、氷山の海中部分もそのぐらいあるからです」

氷山は島を取り囲む浅い棚状の海底に引っかかって止まり、陸地には衝突しないかもしれない。またレディンガー氏は、現在氷山がある海域は氷にとっては暖かすぎるため、おそらくすでに分裂しはじめているはずだと指摘する。

「A68からは長さ1.5キロメートルほどの小さな氷山がいくつか分離しています」とレディンガー氏は言う。この3年の間にすでに大きな氷山も分離して、A68bとA68cと名付けられており、「もっと大きい氷山が分離して『A68d』と呼ばれるようになっても驚きません」

「A68はまもなく接地、すなわち棚状の浅い海底にぶつかります。その後は立ち往生するか回転するでしょう」と、氷山の動きを追跡するブリガムヤング大学リモートセンシングセンターのデビッド・ロング所長は言う。ロング氏は、氷山は指先のように見える側からぶつかって、より早くバラバラになる可能性があり、残りの部分は海流に押されて旋回し、サウスジョージア島の北に進んでいくかもしれないと見ている。氏は、回転しつつ東に進んでから北上するだろうと期待する。

氷山が増えるおそれも

棚氷とは、陸地から続く氷床が海に押し出されて、割れずに浮いている部分だ。したがって、棚氷が分離すれば氷山になる。こうした現象は自然のプロセスであり、ラーセンC棚氷は少なくとも1万年前から存在していた。

地球温暖化に伴い、ラーセンCが崩壊することが最初に予想されたのは今から40年以上前のことだが、だからといって地球温暖化がA68を生み出したと言うことはできない。米メリーランド大学の地球物理学者ケリー・ブラント氏は、「気候変動について何かを言おうとするとき、特定の出来事について語ることはできません」と言う。「あくまで統計的なことしか言えないのです」

けれども今後、サウスジョージア島に向けて、より多くの氷山が送り込まれる可能性はないのだろうか?

南極大陸から分離した氷山のおよそ90%は、まず南極大陸の沿岸を南極環流とは逆の時計回りに進んでウェッデル海に入り、そこから「氷山通り」と呼ばれる海域を通って、サウスジョージア島に向かって北上する。

ロング氏は2002年に、1978年以降確認されたすべての氷山を追跡してみた。その結果、氷山の数は指数関数的に増加しており、気候変動を反映しているように見えた。

しかし、氷山の発生地点までたどってみると、氷山の増加は棚氷の成長と崩壊の自然なサイクルの一部である可能性があることに気づいた。そのため当時のデータでは、氷山の増加が温暖化に原因があるとは言えなかったが、「一方で、温暖化の関与を否定することもできませんでした」と氏は言う。

2017年にラーセンC棚氷からA68が分離したとき、英国南極調査所も同様の結論に達し、気候変動が一役買った可能性はあるものの、棚氷の自然なサイクルも要因の1つであるとした。

その一方で、2002年に起きたラーセンB棚氷の崩壊は、温暖化した大気が棚氷の自然なサイクルを突然終了させることを実証した例だ。ラーセンB棚氷の表面に氷が解けて融水池が形成され、氷の中にその水が浸透して棚氷を砕き、多数の氷山を生み出したのだ。

ロング氏が米国立雪氷データセンターの科学者と行った2018年の研究によると、南極半島に残っている棚氷は、こうした「水圧破砕」に対して非常に脆弱である可能性があるという。ロング氏は「温暖化が進めば、より多くの氷山が出現するでしょう」と言う。

ただし、どれだけ多くの氷山がサウスジョージア島に到達するかは別問題だ。この海域で氷山が珍しいものではなくなったとしても、A68のような大きさの氷山はめったに来ないかもしれない。レディンガー氏によると1970年代以来、氷山通りを通る巨大氷山の数は、見たところ増えても減ってもいないという。

そして、より小さい氷山は、サウスジョージア島の周辺海域に到達する前にバラバラになる傾向がある。

「サウスジョージア島に到達するにはかなり大きな氷山でなければなりません」とロング氏は言う。「こうした氷山が今後、増加するかどうかを予想するのは困難です」

海底にはガラパゴス並みの豊かな多様性

現在、A68氷山はこの地域の野生生物の多様性にとって、大きな脅威となっている。

水中部分の大きい巨大氷山は「海底をかき分けて進みます」とターリング氏は言う。「サウスジョージア島について本当に重要なのは、その海底が信じられないほど生物多様性に富んでいるということです。ガラパゴス諸島に匹敵するほどの多様性です」

サウスジョージア島の周辺の海底を調査した科学者たちは、クモヒトデ、ウニ、ミミズのような形のぜん虫、カイメンなどが豊かに集まった群れを発見している。魚類やナンキョクオキアミも豊富に生息していて、アザラシやペンギンや各種のクジラを支える食物連鎖の主要な要素となっている。

ペンギンやアザラシの餌場は沿岸の棚状の海底の端にあるため、氷山が海底に引っかかると陸地と餌場を隔てる壁となり、動物たちにも被害が及ぶことになる。

「子育ての時期は動物たちのライフサイクルの中で非常に重要な時期で、近くの餌場へ頻繁に行く必要があります」とターリング氏は言う。

巨大氷山が砕けたとしても、小さな氷山の群れが動物たちの餌場への道を塞いでしまう可能性がある。

何億トンもの淡水からなるA68氷山は、最終的に融解したときに、塩水に適応した藻類やプランクトンなどの生活環境を悪化させることにもなる。

2021年1月下旬には、英国南極調査所が率いる科学者チームが南大西洋南西部にあるフォークランド諸島から氷山に向けて出発し、生態系への影響を調査する予定だ。彼らがもたらす情報は、温暖化によって氷山の数が増えた場合に生態系がどのように変化するかを理解する上で、きわめて重要なものとなるだろう。

(文 SARAH GIBBENS、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年12月21日付]

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