Da-iCE工藤大輝 ラジオは素で話さないと届かない
僕たちのラジオデイズ(9)
2018年4月より、TBSラジオで毎週土曜22時~24時に生放送されている番組『TALK ABOUT』。パーソナリティーを務めるのが、Da‐iCEのリーダー兼パフォーマーで、楽曲制作も手掛ける工藤大輝だ。『TALK ABOUT』は、TBSラジオが「10代のリスナー層拡大」という命題のもとスタート。毎回、番組に届いた「ティーンの声」を紹介。今、彼らが何を考えていて、何に悩んでいて、何を楽しんでいるのか──ティーンの"リアル"が全方位的に集まった番組として人気を博している。番組を通して身についたこと、また音楽活動にプラスに働いていることについて聞いた。
元カノの話も隠さずにする
「番組には、日常的なものからとてもシリアスなものまで、10代の子たちからたくさんのメッセージが送られてきます。僕は今33歳なんですけど、先生的な目線だけでなく、自分が学生の時にどうだったかという友達目線の助言もできるギリギリの年齢なのかなと。それをメッセージの温度感に合わせて使い分けてる感じですね。リスナーのなかにはデリケートな子も多いので、『とっつきやすい兄ちゃん』じゃないですけど、なるべく優しく相談に乗ってあげることを第一に考え、コミュニケーションを取るようにしています。
あと、自分を作ったりせず、素で話さないとちゃんと届かないというのはありますね。"ダンスボーカルグループに所属し、普段は黄色い声援を受けている人"という感じで立ち回ると、どうしても恋愛の相談とかをうやむやにする必要が出てきてしまう。なので、僕は元カノの話なども普通にするようにしています(笑)。星野源さんや福山雅治さんも、ラジオで下ネタをバンバン言うじゃないですか。そうやって素を見せることが、たくさんの人から支持される要因の1つでもあると思うので。自分が客観的にこのラジオを聴いたと想定して、『この人作ってるな』『寒いな』って思われないものにしていますね」
週替わりでミュージシャンなどをゲストに招き、リラックスした雰囲気のなかで繰り広げられるトークも番組の魅力の1つ。ただ初めて会う人も多いことから、この3年で、パーソナリティーとしてのMC術も身についてきているようだ。
「『TALK ABOUT』は生放送なので、事前にゲストの方と直接打ち合わせができないことも多いんです。だから、ブースの中で『初めまして』の場合もたくさんあって。ご挨拶からのちょっとしたおしゃべりで、どういう人なのかを把握しなければいけない。まず冒頭で、ゲストのプロフィルを僕が紹介するんですけど、そこで『こうでしたよね?』って問いかけた時に、『はい』で終わる人なのか、そこから話を発展させるタイプの人なのかによって、その日の自分のスタイルを決めています。『はい』で終わった場合、今日は自分がアクセルを踏んでいくんだと覚悟ができる(笑)。逆に、どんどん話してくださる場合は、ブレーキの配分を考えたり。初めの5分で、その日のキャッチボールの仕方を計算しています」
「あと、他ではあまりされない質問をするようにしてます。僕もゲストとしてたくさんのラジオに出演してきた経験上、作品のリリースのタイミングだと、同じことを聞かれることが多い。なので、相手が飽きないよう、どういう角度の質問があるかなって考えて臨んでいます。
ゲストで来てくれた方とはその後、仲良くなることも多いですね。普段、Da‐iCEとして対バン型のライブイベントに出演しても、大体挨拶して終わりなので、そこからつながることって意外と少なくて。でもラジオだと、相手をしっかり掘ってしゃべらないと、どういう人か分からないし、こっちも心を開けない。その突っ込んだ絡みが、リアルタイムでダダ漏れしてるのが、まさにこのゲストコーナーですね(笑)。BLUE ENCOUNTの田邊駿一くんとは、ゲストで来てもらったのをきっかけに、今では1週間に1回は会って、一緒にサウナに行くような仲になりました」
芸能界屈指のアイドル通としても知られる工藤は、その知識を生かした企画も数多く行っている。なかでも、ジャニーズのグループの楽曲を特集した回は、これまでのなかでも特に大きな反響があったという。
「僕の好きなジャニーズさんの各グループの曲を、作詞家・作曲家といったクリエーターの話にも触れつつ、みっちり解説したんです。もちろん、シングルだけでなくアルバム収録曲にまで広げて。この企画は何度かやっていて、SMAPさんを特集した回もあれば、平成以降に生まれたグループのHey! Say! JUMPさんや、Sexy Zoneさんたちで特集した回もありました。ジャニーズさんのグループの曲は、サブスクで展開されてないものがほとんどなので、リスナーもアルバム曲までは知らない人も多かったみたいで、『こんなかっこいい曲があったんだ』みたいなリアクションもありましたね。
僕は常日ごろからアイドル好きを公言はしてるんですけど、ジャニーズさんの曲を聴くイメージは意外とないらしく。それなのに詳しくしゃべるもんだから、『なんでこんなに知ってるの?』と食いついてくれたみたいで(笑)。やっぱり意外性のある企画が刺さるんだなと思ってます」
普段あまり接点のない10代や、毎週迎える多彩なゲストを通して得られるものは、Da‐iCEの音楽活動にも大きな影響を及ぼしているという。
ラジオでティーンの流行を知る
「若い子たちのピュアで真っすぐな思考回路に触れると、『あ、昔は俺もそうだったよな』って思い出せるんです。この脳の使い方ってすごく大事で。当時好きだった曲を改めて聴いて、理解が広がるみたいなことにもつながる。
あと、今ティーンの間では何がはやっているかを、いち早く知れるのも大きいですね。このアーティストやYouTuberさんが人気だとか、TikTokで話題になってる曲だとか。番組で流す曲も自分で決めているんですけど、実際に流行している曲をかけた時に、10代の子たちのリアルな反応が見られるのもすごく貴重で。『これ実際は、はやってないんじゃん』ってことも分かったりする(笑)。そういった1つひとつのことが、Da‐iCEの楽曲制作にもかなり反映できていると思います。
ゲストの方と仲良くなり、Da‐iCEに楽曲提供をしてもらったこともあります。Official髭男dismさんは、まさにそれですね。ボーカルの藤原聡さんに『FAKE ME FAKE ME OUT』(19年)というシングル曲を書いていただきました。また逆に僕がオファーを受けて、ボーイズグループのCUBERSさんに曲を書かせてもらったたこともあります。
Da‐iCEの音楽性とは異なるアーティストの方に出会えたり、音楽により向き合える場であるという意味でも、やっぱりこの番組の存在は大きいですね」
若者たちの"知りたい"が集まる情報バラエティー。街頭調査や番組へのメッセージを通して、勉強、進路、友達、恋愛など、ティーンの様々な"今"を共有する。(土曜22時~24時/TBSラジオ)
マイク1本、声だけでコミュニケーションするラジオは、タレントとリスナーの双方にとって親密度の高いメディアだ。再評価が進むラジオの魅力を、人気パーソナリティーたちに聞いた。
●草彅剛×香取慎吾(前編)「もしラジオがなければこの3年は…」
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●空気階段「リスナーが親近感持つ理由は?」
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●工藤大輝(Da-iCE)
(ライター 小松香里)
[日経エンタテインメント! 2020年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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