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ほぼ日社長 糸井重里さん

ほぼ日社長 糸井重里さん

コピーライターで株式会社ほぼ日の社長、糸井重里さんは2021年、「学び」に本腰を入れる。多様な学び動画をネット配信する「ほぼ日の学校」を今春、立ち上げる。「学びとキャリア」や「ビジネスにとっての学び」について、糸井さんに語ってもらう連載の最終回。豊富な知識や資格は有力な武器の一つだが、糸井さんは、ビジネスの現場で重要なのは「目に見えない人間力」ではないかと話す。

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――デジタルが学びやキャリア形成にどのような影響を与えていると思いますか。

「デジタルは道具として、とてもありがたいものだけど、なんでこれ(デジタル)を始めたのかがわからなくなってしまうことがあります。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにリモートワークが広がりました。これもデジタル技術が発展したおかげですが、『なぜリモートワークを始めたんだろう』という根本を見失うと、より良い人生とか、よりよく働くという目標から遠くなってしまうと思うんです。デジタルって道具にすぎないと思っています」

「経験値って言葉を最近、よく耳にするようになったんですが、ちょっと違和感があります。本当は見えないはずの経験が、悪い意味でのデジタル化というか数値化された印象を受けるからです。『あの人は戦争で大変な経験をしてきたんだよ』と言えばいいのに、『あの人は戦争の経験値が高い』と聞くと、何か違うんじゃないかと。もともと経験値って、ゲームで使われていた言葉のはずです」

「英語のイコール、等価という価値観が強まった感じもしますね。もっとわかりやすく言うと、コスパ(コストパフォーマンス)がいいかどうかで、判断しがちになっているんじゃないかな。食事に行って、『おいしかった』『おいしくなかった』でいいと僕は思うんだけど、『コスパが良かった』っていうのはどうなんでしょう。生産性とか効率とか言う部分ばかりに着目していると、自分自身も数字で判断される、数字の奴隷に近づいているようで、おかしいと思うんです」

――仕事も学びも、目に見える成果や結果が重視されています。

「学びについてコスパって考えるのは、あまり良くないと感じますね。大学生が資格を取ったから就職に有利になった、と考えるとしたら、その就職先は『君である必要はないよね』と言いたくなります。その資格があればその人でなくてもいい、その機能を持っていないとその人はいらない、ということになってしまうからです。もちろん、資格を否定するつもりは全くありませんけど、就職や出世のためだけの資格を目指すのって、ちょっとさもしいような気がします」

「ビジネスの現場でも、営業マンが豊富な知識を持っているのは当然だけど、ただ知識量が多い人より、話題が豊富で引き出しが多く、こちらの事情に合わせて提案してくれる営業マンから買いたくなりますよね。資格とか知識だけでない学びの結果って、ビジネスでも底力的に生きてくるんじゃないでしょうか」

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