コロナでも豆は売れているが 丸山珈琲「閉店」のナゼ

10月末に閉店した丸山珈琲の表参道Single Origin Store(左、2017年開業)と鎌倉店(15年開業)。首都圏に喫茶スペースのある店はなくなった
10月末に閉店した丸山珈琲の表参道Single Origin Store(左、2017年開業)と鎌倉店(15年開業)。首都圏に喫茶スペースのある店はなくなった

2020年秋、高品質のスペシャルティコーヒーの市場をけん引してきた丸山珈琲(長野県軽井沢町)が一度に5店舗で喫茶をやめ、業界関係者や愛好家らの注目を集めた。10月31日に表参道Single Origin Store(東京・港)と鎌倉店(神奈川県鎌倉市)、MIDORI長野店(長野市)を閉店。西麻布店(東京・港)は物販・商談スペースなどを備えたショールームに、尾山台店(同・世田谷)は物販とテークアウトの業態に転換した。現在、営業する9店のうち喫茶スペースがあるのは4店のみになった。

「新しい生活様式」のもと、コーヒーの家飲み需要が伸びる一方、「店」のあり方が問い直されている。今回の決断は、そんな業界共通の課題を反映しているのか。それとも高級コーヒー特有の理由によるものなのか。丸山健太郎社長に実情と真意を語ってもらった。

丸山珈琲は1991年創業。「当社をカフェチェーンだと思われるお客様は多いけれど、本質は豆のチェーンなんです」と社長の丸山健太郎さん

――業界には「市場が激変しているとはいえ、こんな大胆な決断をよく下せたものだ」と理解を示す人もいます。ただ、消費者との接点が減ってしまうデメリットも懸念されます。今回の決断に迷いはなかったのでしょうか。

「もちろん葛藤はあったし、胸が引き裂かれる思いもしました。長野に閉店の手伝いに行った時も、心はボロボロで。ひいきのお客様の不満の声も届くし。しばらくはボーっとして色々考えてしまいました。やっぱり閉めなくてもよかったんじゃないかとか。でも1カ月たつと、実はそれほど悩むことじゃない、店を閉めるのも思ったほど悪いことじゃないとわかってきた」

――採算的にみて閉めるべきだった?

「実のところ、コロナ禍にかかわらず数店の喫茶は閉めたほうがいい状況でした。丸山は順調だ、と見る人もいたでしょうが、内情は違います。特に東京の店は話題性やブランディングの面ですごい効果はあったけれど、従来の運営スタイルは利益が出にくい。そしてコロナによって今後の予想がつかなくなった。このまま続ける選択肢もありましたが、これが事業モデルを考え直すいい機会になると判断したのです。コロナ禍であればお客様も納得するだろうと」

――店の運営形態が理由でしょうか。

「僕は世界と戦うためにまず東京に出よう、ということで2012年、尾山台に出店しました。その時、軽井沢で成功しているフルサービスの店にするか、それとも東京に合わせた効率重視のモデルにするか迷ったんです。僕の中では、スペシャルティは特定の地域で生活に欠かせない飲み物になるだろう、という目算があった。それで軽井沢のモデルでじっくり店を増やしながら成功を目指そうと考えました」