スーパーのロピアで販売している5種類のオリジナルブレンドは100グラム399円(税抜き)

――丸山珈琲は今後、どんな会社になっていくのでしょうか。

「ウチはメーカーに近い会社になります。丸山珈琲の強さは高品質な豆のバイイングにありますから。素晴らしいコーヒーが提供できるのであれば、別に丸山珈琲の名前が最終消費者の目に触れなくてもいい。ウチの生豆を使いたいというプロはたくさんいて、海外からも引き合いがものすごくある。豆の卸売りは国内外で積極的に増やしていきます」

「焙煎(ばいせん)した豆の需要も大きい。当社のテーマの1つは、高品質を保ちながらの販売チャネルの多様化。4月末に低価格スーパーのロピアでオリジナルブレンドを発売しましたが、思った以上に売れています。スーパーは重要なチャネルです。EC(電子商取引)も売上高の半分ぐらいに伸ばしたい。自社サイト以外にも販路を広げます。日常使いのスペシャルティについてはいずれ新しいブランディングも考えることになるでしょう」

豆の特徴や生産者の横顔を紹介する「Beans Menu」。表参道店開店時に発行を始めた人気の無料冊子もひとまず休刊する

――スペシャルティの需要はまだ伸びますか?

「コロナ禍で改めてわかったのは、よりおいしいコーヒーを日常的に飲みたい消費者が確実に増えていること。喫茶の客は減ったけれど、店頭での豆売りはすごい増えたし、通販も、スーパーでの売り上げも伸びた。僕が懐疑的だったドリップバッグとかも売れた。ただ、その多くはスペシャルティでも、コアなファンが求めるトップクラスの豆ではなく、少し下のボリュームゾーンなんですね。もちろんこのゾーンでも品質はとても高いのですが」

――需要の裾野を掘り起こしていくと。

「今後はこのボリュームゾーンをきっちりとっていく。それによってバイイングパワーが増し、トップクラスの豆をもっと買えるようになる。そうすれば、素晴らしい生産者の豆を目利きして、届けるべき消費者に届けるという、僕が目指す両者の橋渡し役を果たせることになる。スペシャルティもメジャーな存在になっていく。その場合、別に店がなくてもいいんです」

「一方で、上顧客を抱える飲食店関係者などにスペシャルティの素晴らしさや面白さを伝える機会を増やします。例えば、ワインに精通した人やソムリエは、コーヒーは焙煎でいかに味が変わるかという話に興味を抱いて、スペシャルティの概念を正確に理解してくれる。こういう方々を通じて、最高級の豆を求めるお客様を徐々に増やしたい。ボリュームゾーンとトップクラス、その双方でお客様を増やして、スペシャルティをもっとメジャーな存在に育て、当社も売上高20億円の壁を超えたいと思います」

――店はもう増やさないつもりですか?

「僕は正直、お店にそれほどこだわっていない。でも、店をあきらめたわけじゃありません。フルサービス型店舗は東京でのライフサイクルが終わりました。長野県の店は今のままで大丈夫。時間をゆっくり使う場所だから。東京に新店を出すなら店作りのイノベーションが必要でしょう。ブランド感があり、経済合理性の高いスタイルですね。でも今、新しい手を打つのは得策じゃない。状況が不安定すぎます」

――喫茶の縮小による負の影響は克服できますか?

「複数の店を閉めることで、若い社員が経験を積む機会や、バリスタが腕を磨く場が減ってしまう。ここは我慢してもらうしかありません。人材育成の面では不安も残ります。これは仕方がないことです。でも合理的に考えれば、やはり今、店を閉めて良かったと思っています。コロナが収束したら、消費者の振るまいの変化を見定めて、新しいコンセプトの店をしれっと出しますよ。きっとね」

(名出晃)

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