日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/1/10

コスタリカの慎重なアプローチ

ケニアよりも、さらに慎重なアプローチを取り、大々的な安全対策を導入して再開した国がコスタリカだ。コスタリカでは、年間で40億ドル(約4160億円)あった観光収入が、今年は減少して70%ほどになるとみられている。

コスタリカの観光大臣を務めるグスタボ・J・セグラ氏は、「数十万もの人が仕事を失ってしまいました」と発言。事実、観光業に直接または間接的に関連する60万人の職が失われた。観光業はコスタリカのGDPの8%以上を占め、例年約300万人の外国人観光客が訪れる。その半分近くが米国人だ。だから「一日も早く米国の観光客がコスタリカに戻ってきて、以前と同じようにお金を使ってほしい」と関係者がこぞって切望するのはもっともなことだ。

旅行客にも国民にも安全な形になるよう、観光客の受け入れ再開を政府は慎重に進めた。20年7月に、まず国内の観光を再開、8月初めには人数を制限してヨーロッパからの観光客の入国を許可した。ビーチは毎日午後2時半に閉められ、ガイド付きツアーも、家族連れなど一緒に旅行する少人数のグループに制限した。

こうした努力もあってか、「今のところコスタリカへウイルスを持ち込んだ観光客も、滞在中にウイルスに感染した観光客もいない」(セグラ氏)。なお、20年9月からは、米国の一部地域からも受け入れを再開している。

コストと利益をてんびんに

カリブ海の島々も、少しずつ米国からの観光客を受け入れ始めている。観光業がGDPの50%以上を占める米領バージン諸島などが、先陣を切って6月に受け入れを再開し、その後セントルシア、タークス・カイコス諸島、ドミニカ共和国、そしてもっと最近ではグレナダも後に続いた。

19年、カリブ海諸国を訪れた観光客の総数は3150万人で、400億ドル(約4兆1600億円)以上の収入をもたらした。今年は、この観光収入が50%以上減るとみられている。

グレナダは、20年10月上旬に米国からの観光客受け入れを再開したが、その前に政府は、カリブ海観光協会や公衆衛生局と緊密に連携し、感染対策の様々な措置を講じた。グレナダの新型コロナ感染者数は、41人にとどまっている。

非居住者は、入国前7日以内にPCR検査で陰性の判定が出ないと入国できない。入国後は、滞在先のリゾート地またはホテルで4日間自己隔離し、その後再び検査を受ける。2回目の検査が陰性であれば、国内の他の場所を観光できる。

国境を再開する前にどれだけ慎重に対策を講じても、アウトブレイク(集団感染)を防ぐのは難しい。「いくら予防策を取ったとしても、ウイルスは入ってきてしまうでしょう。旅行者が持ち込んでしまうものなのです」と語るのは、米ノースカロライナ大学の疫学者ナバルン・ダスグプタ氏だ。「問題は、そうなったときにどう対応するかです」

グレナダでは、そのために広範囲な接触者追跡ができるよう態勢を整えている。また、2000人以上の観光業従事者を対象に感染対策の訓練を行った。コスタリカは、高い評価を受けている公的医療体制を武器にする。例えば、国中どこに行っても予約なしに受診できる診療所がある。「観光業にとってはこれが非常に重要です。我が国では、どんな田舎でも免許を持った医師にかかることができます」。また、新型コロナ関連の入院や隔離を補償する旅行者保険への加入を義務付けている。

外国人観光客の受け入れ再開を成功させるには、感染拡大の防止と封じ込めが重要なカギだ。「旅行先の国が自分の安全に配慮してくれていると感じられなければ、人は旅行には行かないでしょう」と、カーベル氏。「それなりの安全性を提供する国に、市場は報いてくれるはずです」

メキシコ、ラパスにあるレストランで、テーブルを消毒するウエーター(PHOTOGRAPH BY ALFREDO MARTINEZ, GETTY IMAGES)

次ページでは、いつかは訪れたいカリブ海の絶景をお届けする。1日も早く、また旅に出かけられる日が来ることを祈りたい。

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