ひらめきブックレビュー

良書でビジネス脳を鍛える 年越しにオススメの10冊 選書のプロがセレクト

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コロナはどこまで社会のあり方を変えていくのか(『コロナの時代の僕ら』=左=と『BEYOND SMART LIFE 好奇心が駆動する社会』)
コロナはどこまで社会のあり方を変えていくのか(『コロナの時代の僕ら』=左=と『BEYOND SMART LIFE 好奇心が駆動する社会』)

仕事に役立つ発想のヒントを与えてくれる良書を月に6冊ずつ紹介している「ひらめきブックレビュー」。2020年に取り上げた72冊の中から、年末年始にぜひとも読み返していただきたい本を10冊選んでお届けする。書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」を運営する情報工場のエディター、安藤奈々氏と前田真織氏が、それぞれの本の読みどころを語った。

>>「年越しにオススメの10冊」一覧はこちら

◇   ◇   ◇

――今年はコロナ関連の本が数え切れないほど出ましたね。その中で、改めて読み直したい本を挙げてください。

前田 4月に緊急出版された『コロナの時代の僕ら』参考記事 コロナ前に戻らない選択とは イタリア物理学者の警鐘)は、2月からコロナの感染者が急増したイタリアの作家が書いたエッセー集です。物理学者でもあるパオロ・ジョルダーノ氏は、未知のウイルスに対する不安と恐怖が世界に広がる中で「冷静になろうよ、落ち着こうよ」と呼びかけました。第1波でパニックに直面していた当時は読み流したけれど、第3波のただ中にある今だから分かる――。そんな言葉がたくさん出てきます。

■コロナに向き合うイタリアの賢人

印象的なのが「僕は忘れたくない」で始めるフレーズです。「僕は忘れたくない。ルールに服従した周囲の人々の姿を。そしてそれを見た時の自分の驚きを。病人のみならず、健康な者の世話までする人々の疲れを知らぬ献身を。そして夕方になると窓辺で歌い、彼らに対する自らの支持を示していた者たちを」。

3月20日の時点でこう呼びかけています。「家にいよう(レスティアーモ・イン・カーサ)。そうすることが必要な限り、ずっと、家にいよう。患者を助けよう。死者を悼み、弔おう。でも、今のうちから、あとのことを想像しておこう。『まさかの事態』に、もう二度と、不意を突かれないために」と。

安藤イタリア人は自己主張が強いというイメージがありますが、それは一面的で、けっこう思慮深いのですね。ローマ時代から引き継がれる「自省の文化」があることを教えてくれたのが『パンデミックの文明論』です(参考記事 コロナ対策、東西でなぜ違う 「空気」が生む自粛警察)。イタリア人は強気に見えて、実は内省する人が多いようですね。ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの『自省録』を学校で学ぶともありました。

この本はイタリアで長年暮らしている漫画家のヤマザキマリさんと、脳科学者の中野信子さんとの対談です。主にイタリアと日本を比較しながら、コロナ感染拡大で見えてきた東西各国の国民性や文化の違いを、辛口の口調でバッサリ切っていくところが魅力です。とくにグサっとやられたのが、イタリア人と違って日本人は容易に反省しないという指摘です。何かトラブルがあったら、世間に対してごめんなさいという。世間体を重視することが、自粛警察を生んだり、感染を抑えた面もあったかもしれませんが、実は自分自身で本質的な責任と向き合うことをしていないのかもしれない……と、考えさせられました。

前田 確かに……。コロナに限らず、日本人は反省が苦手といえる面があるかもしれません。女性2人による対談本は、実は少ないんですよ。キャラの濃いお2人のやりとりは小気味が良くて、テンポ良く読めますし、発見が多い一冊です。

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