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「ブラウンサウンドコーヒー」では創作パニーニが光る

「習志野ソーセージ」のバリエーションは幅広い。老舗の酒屋・タバコ店だった場所に、千葉県酒々井出身の息才鳩美さんが5年前、カフェに改造して開店した「ブラウンサウンドコーヒー」。店全体にドライフラワーを飾るなどお洒落なインテリアが女性客らを惹き付ける。

この店の目玉メニューの1つが「習志野ソーセージのパニーニ」だ。フランスパンとコッペパンを合体したようなゴマの乗った温かい「セサミパン」で、ボイル後に半切り状態でつなげたままグリルしたソーセージ、ミートソース、チェーダーチーズ、ピクルスを挟み込んだ逸品。温かい本場のコーヒーとのマッチングが絶妙だ。

「ブラウンサウンドは音楽用語で、『温かい音』の意味です。コーヒーを淹れる音、本のページをめくる音。そんな音が交わる癒し空間を作りたかった」。都内の有名コーヒー店でバリスタを経験した息才さんが築いた理想郷である。

京成谷津駅からラムサール条約登録地、谷津干潟へ向かった。黄金色に輝く水面で野鳥が羽根を休めていた。小学生時代に遠足で出かけた「谷津遊園」を思い出す。東京ディズニーランド開業の半年前の1982年末に閉園したが、プールや大観覧車、ジェットコースターもある巨大パラダイスだった。経営が京成電鉄から市に移管されたバラ園の横には「読売巨人軍発祥の地」の碑がある。

読めば、1934年(昭和9年)、正力松太郎がベーブ・ルースやルー・ゲ―リッグら大物スターからなる全米選抜野球チームを招聘し、谷津の野球場で、日本の6大学野球の精鋭を結集して対抗戦を開催。そのチームを母体に読売巨人軍が誕生した、とある。へえーっと驚いた。

むぎのいえのプリプリした習志野ソーセージ。これまたビールと実に合う

最後に立ち寄ったのは、クラフトビール工房のある「むぎのいえ」。2017年の開業で、まだ真新しい店内はログハウス風の手造り感があふれ、客席からは「谷津の小さなビール工場」が見える。

店主の今井貴大さんは、八千代高校卒業後、舞台技術養成学校へ進み、照明を専門に手掛けた。6年ほど日本全国を音楽ツアーなどで回るうち、札幌で飲んだベルギービールに魅了された。「もともと図工が大好きで、店も全部手造り。ビールの醸造も自分でやろうと、工房も作ってしまいました」と笑いつつ、ビールの製造工程を説明してくれた。プリプリした習志野ソーセージに、熟成ベーコン、オニオン、人参がまたビールと実に合う。

ふと原田さんの言葉を思い出した。「ベーブ・ルースが打ったホームラン球は当時、子供だった床屋のご主人が拾い、後に巨人軍に寄贈しました」。地元では知る人も多いが、よそ者には面白い。谷津でクラフトビールを味わいながら、1974年の長嶋茂雄さんの現役引退試合のシーンがよみがえる。「我が巨人軍は永久に不滅です」という名台詞ーー。1週間ほど歩き回った習志野の町は地域資源の宝の山だ。習志野ソーセージもきっと「永久に不滅です」となるはずだ。

(ジャーナリスト 嶋沢裕志)

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