こちらがカーシャ。ロシア語やウクライナ語で「おかゆ」を意味する。そばのほかにイネ科の雑穀や豆類などを水、ブイヨン、牛乳で柔らかく煮た東欧の代表的な家庭料理=PIXTA

日本国内のそば粉シェア最大手、そば生産の盛んな信州に本社を構える日穀製粉(長野市)によると、「そばは、ロシアではそばの実のおかゆ『カーシャ』、中国内モンゴル地方では、太い麺にして具入りスープをかけて食べる『ヘイロ』、ネパールではそばがきにカレーをかけたものが食べられており、韓国の冷麺にもそば粉が使われています」とのこと。

一方の日本そば。地域によって色々な食べ方があるような印象を持つが、「まず、日本三大そばと呼ばれる戸隠そば(長野県)・出雲そば(島根県)・わんこそば(岩手県)があります。さらに全県にそれぞれの食べ方がありその数は何百種類にもなります。信州だけでも、戸隠そば・投汁(とうじ)そば・スンキそば・凍り(こおり)そば・富倉そば・はやそば・辛味大根そばなど、地域に根差した料理として発展し今もなお愛されています」(日穀製粉の担当者)。

数百種類!? どうやら、想像していた以上に全国各地でローカルフードとして独特の発展を遂げているようだ。

冒頭に述べたように、「ハレの日」の食べ物として頻繁に顔を出すそば。大みそかの夜に食べる「年越しそば」の由来について、日穀製粉はこう続ける。「江戸時代中期にはすでに定着し、様々な説があると言われています。代表的なものでは、年の瀬を越せない町人に『世直しそば』と称してそば餅を振る舞ったところ、翌年からみな運が向いてきたため大みそかにそばを食べる習わしが生じたとする説、そばは切れやすいから、旧年の労苦や災厄をばっさり切り捨てると願う説、植物としてのそばは少々風雨にあたっても翌日陽が差せばすぐ起き上がることにあやかり、捲土(けんど)重来を期して食べるという説等々、色々な縁起を担いで年越しそばは食べられています」。

一体どれだけの縁起を担いでいるんだ!と突っ込まざるを得ない、そばという食材のマルチな面をうかがい知ることができる。

気になるそばの栄養面についてはどうか。そばは、うどんやパスタなどほかの麺と比較して、穀物では唯一、抗炎症効果や血流改善効果があるといわれるポリフェノールの一種ルチンが含まれているほか、コメや小麦には少ないアミノ酸のリジンが多く含まれている。「そば粉に限らず、そばの実を粒状のまま加工した『そば米』(同社にて販売中)はそばの栄養価も丸ごと摂取でき、様々な料理にお使いいただけるのでおすすめです。ダイエット食としても話題ですよ」と教えてくれた。

やはり、栄養価からしても世界を魅了するポテンシャルにあふれるそば。なかなか外食が難しい昨今、自宅でそばをおいしく食べるためのポイントを日穀製粉に伝授いただいた。

「乾麺の場合、ゆでる前に20分程度水に浸してからゆでると生麺っぽい仕上がりになります。また、そば湯に関しては、スーパーなどで市販されている生そばの場合『打ち粉』にでんぷんなどを使用していることが多く、製麺の際に『食塩』を使用することもあるため、そば湯に適さないことがあります」

水に浸すとは目からウロコ。次回から、コメを吸水させるがごとくそばの乾麺は水に浸す、そしてパッケージに「そば湯も飲める」と記載のあるもの以外はそば湯を控える、これでいこう。

高級食材のカラスミをそばに。一年のご褒美に皆さんもいかが

家でおいしくできるポイントを聞いたところで、最後に日本酒にも目がない飲兵衛な筆者が個人的にイチ押しなそばの食べ方を紹介しよう。その名も「カラスミそば」。ゆでたそばに日本酒と白だしを適量まわしかけて、最後にカラスミをふんだんにすりおろしただけ。カラスミの塩気とそばの風味、日本酒との相性が抜群だ。

今年はコロナの影響で帰省できそうにないが、フランスでも、縁起をおおいに担いで年越しそばを楽しむことにしよう。皆さんもどうか、よいお年を。

(パリ在住ライター ユイじょり)

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