在宅こそ気をつけたい「冬うつ」 日光不足で忍び寄る
産業医・精神科専門医 植田尚樹氏
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冬になると気分が晴れないと感じる人もいるかと思います。もし毎年のように、気分の落ち込みや体調不良を覚えるのなら、「冬季うつ」「冬うつ」と呼ばれる「季節性うつ病」かもしれません。新型コロナウイルス感染拡大による在宅勤務などで、こもりがちな昨今だからこそ、気をつけたいところです。
20年来、毎年冬になると体調不良
金融機関に勤める50歳代男性の事例です。
この20年ほど、毎年冬を迎えると体調不良を覚えるといいます。症状は上半身の発汗や、頭痛、動悸(どうき)などで、集中力の低下、心身疲労で仕事に支障をきたすこともしばしば。1回休職したことがありましたが、ほとんどの場合、出社できないほどではありません。抗うつ剤などを処方しますが、いつも春を迎えると回復します。
季節性うつ病と一般的なうつ病との違いは何でしょうか。表れる症状はほぼ同じなのですが、季節性うつ病は毎年ほぼ同じ時期、季節の変わり目に発症し、季節が過ぎると回復する周期性があることが特徴です。特に秋から冬にかけて、症状を訴える人が多く見受けられます。また、一般的なうつ病とは異なり、明らかなストレス要因が認められることは少ないようです。
一般的にうつ病では不眠、食欲不振といった症状が表れますが、冬季うつでは、過眠や過食(甘い物や炭水化物など)がみられることがあります。こうした傾向は特に女性に多いといわれています。
「眠くて仕方がない」「甘いものを食べたい」
IT企業に勤める20歳代女性の事例です。
秋口に体調不良を覚えるようになりました。なぜか涙が止まらなかったり、過呼吸になったり。「眠くて仕方がない」「甘いものを食べたくなる」とも話していました。集中力も落ち、気力もうせ、落ち込みがひどくて仕事にならないと訴え、1カ月ほど会社を休職しました。
産業医が面談して話をきいてみると、ほぼ毎日のように眠気が強く、起き上がれるのは午後になってからといい、倦怠(けんたい)感が強くて、ほとんど外出できていませんでした。ほぼ毎年、秋から冬にかけて、同じような症状が表れるということから、季節性うつ病と診断。天気が良い日は外にでること、朝起床したらカーテンを開けて室内に日光を入るように助言したところ、症状が改善したとのことでした。