超流行モノは気恥ずかしい
――お二人はそんな嗜好を受け継いでいますか。
塁「すごくあります。父(祥介さん)もそうです。僕が子供のころ父がテニスをやりはじめました。当時のテニス界はビヨン・ボルグがスターで、ウエアはフィラやエレッセが大はやり。父はそれが嫌だったようで、とにかく、白の無地のポロシャツを探し回った。それを見ていて、どうしてはやりのウエアを着ないのか理解できませんでした。でも、なぜかラコステはOKなの」
祥介「どうしてラコステはOKかというと圧倒的に素材がいいから」
塁「でも、それは、後付けでしょ」
祥介「うん、後付けだけど。でも実際に鹿の子ポロなんて圧倒的に素材がよくて紡績が違う。ラコステの生地はほかのブランドとは一線を画したいい素材なんだ」
――3代にわたり流行に対する気恥ずかしさがあるのでしょうか。
塁「ありますね。超流行モノに手を出すという行為に対する恥ずかしさ」
祥介「おやじが、『俺、ベンツは乗らないよ。ベンツという名前で乗っていると思われるのが嫌だ』と言う。それでも家族が、安全という意味ではいいのだから乗ってというと、なるほど、これはよくできている、と気に入っちゃう」
塁「ええかっこしいで、偏屈で、自意識過剰なんです。いい意味でね、自意識過剰。実際、ファッション業界の人は自意識過剰じゃないとだめだと、僕も思います。自分のカラー、ブランディングが明確にある。僕も今は近いものがあります」

――塁さんが今日着けている時計はオーデマ・ピゲ。謙介さんの時計を受け継いだと聞きました。
塁「普段はカシオが多いんです。いい時計をしている、と思われるのは気恥ずかしい。ただ、これはケースが小さくていいですよね」

――小径ですごく薄い。エレガントですね。
塁「60年代に薄い時計がよく出ていたんですよ。僕もごつくてでかい時計が嫌い」

祥介「塁がしている時計はおやじが買ったのではなくて、メンズクラブを作った方の形見としておやじが受け継いだものなんです。おやじはロレックスやユリス・ナルダンを持っていたけど、だんだんしなくなって、晩年はずっとカシオでしたよ。塁も似ているよね。僕もきょうはロレックスをしていますが、これはある方から譲ってもらったもの。ゴテゴテしていなくて機能的に十分だから気に入っています」


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