コロナ患者、なぜ減らない? 受診すべき初期症状とは

日経Gooday

写真はイメージ=(c) maridav-123RF
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日経Gooday(グッデイ)

ソーシャルディスタンス(社会的距離)に手指消毒・手洗い、マスク着用――。こうした感染予防策を行っていても、新型コロナウイルス感染症がなかなか減らないのはなぜなのか。例年であれば多くの人が移動し交流が増える年末年始が近づく中、新型コロナウイルス感染症の患者数と重症者数は減る兆しが見えない。患者の治療に当たっている国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医長に話を聞いた。

「密集・密接・密閉」だと感染が広がりやすい

――新型コロナウイルス感染症と同じく飛沫感染するインフルエンザですが、今シーズンは例年に比べ大幅に少ない状況が続いています。インフルエンザがこれだけ抑えられているのに、新型コロナウイルス感染症の感染が抑えきれていないのは、それだけ感染力が強いということでしょうか。

国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医長

そうですね、感染力が強いというより、新型コロナウイルス感染症は「特徴的な環境」で感染が広がりやすいということだと思います。特徴的な環境とは、3密(密集、密接、密閉)のことです。実際、感染の9割超が屋内で発生していたという論文があります[注1]

また、感染しても無症状の人が一定の割合でいるのも感染が広がりやすい理由の一つでしょう。そうした人の割合はまだはっきり分かっていませんが、これまでの報告ではおよそ3~8割の人が感染しても無症状であったといわれています。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでPCR検査陽性だった人のうち、6割弱は無症状でした。

なお、新型コロナウイルス感染症に感染してから、何らかの症状を発症するまでの潜伏期間は1~14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4~5日で発症します。感染した人が、他人に感染させる期間は発症の3日前から発症後5~10日まであり得るとされています。

インフルエンザやかぜと症状で区別するのは難しい

――どのような症状が出たら、新型コロナウイルス感染症を疑うべきでしょうか。インフルエンザやかぜと症状で区別できますか。

新型コロナウイルス感染症の典型的な症状は、発熱、咳(せき)、だるさ、食欲低下、息切れ、痰(たん)、筋肉痛、嗅覚・味覚障害などといわれています。まれですが、目の充血、嘔吐(おうと)、血痰(けったん)が起きたり、血液が固まりやすくなったりすることが分かっています。

かぜやインフルエンザの症状も、新型コロナウイルス感染症に似ています。かぜはゆっくりと発症し、微熱、鼻水、のどの痛み、咳などが数日続きます。それに対し、インフルエンザは比較的急に発症し、高熱と咳、のどの痛み、鼻水、頭痛、関節痛などが3~5日続きます。かぜに比べると高熱が出やすく、頭痛や全身の関節痛・筋肉痛を伴うことがあります。

このうち、息切れや嗅覚・味覚障害はかぜやインフルエンザではなかなか起こらない症状ですので、新型コロナウイルス感染症を疑うきっかけになります。しかし、新型コロナウイルス感染症の症状はかぜやインフルエンザの症状とよく似ているので、ご自身で判断するのは非常に難しいと思います。私も区別が付かないことがあるくらいです。ですから、症状だけで「これはかぜだから受診しなくても大丈夫だな」などと判断しない方がいいでしょう。

――症状での区別は難しいということは、症状があればなるべく早めに受診した方がいいのでしょうか?

第1波のころは混乱を防ぐため、「かぜの症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く」という受診の目安がありました。しかし、今は検査体制も整ってきています。今のような流行状況であれば、新型コロナウイルス感染症の可能性も低くありませんので、症状が軽かったり、発熱がなかったりしても相談・受診してよいと思います。

今は、まずかかりつけ医に相談することになっていますので、一度問い合わせてみましょう。かかりつけ医がいないという方は、各自治体が設けている新型コロナウイルスに関する相談窓口に連絡しましょう。

かぜやインフルエンザは新型コロナウイルス感染症のように咳や痰以外の症状が1週間以上続くことは比較的まれです。特に重症化する方は、発症から1週間前後で咳、痰、呼吸困難など肺炎の症状が強くなってくると分かっています。

流行早期の中国での4万人の感染者のデータによると、発症してから1週間程度はかぜのような軽微な症状が続き、約8割の方はそのまま治癒します。重症化する2割弱の人はそこから徐々に肺炎の症状が悪化して入院に至ります。

さらに約5%の患者はそこから集中治療が必要になって集中治療室(ICU)に入室し、約2%が命にかかわる重症になり得るとされています。日本国内でも新型コロナウイルス感染症と診断された方が自宅待機中に突然亡くなる事例が報告されています。血栓症が関与している可能性もあるので、発症から1週間を待たず、胸痛や呼吸苦などの症状が急激に悪化すれば、すぐに医療機関を受診しましょう。

忘年会・新年会、帰省はオンラインで

――これから年末年始を迎えますが、今現場の医師として伝えたいことはありますか?

まず、今シーズンは現地に集まってお酒を飲む忘・新年会は諦めてください。オンラインに切り替えるなど、感染リスクのない形で楽しんでいただきたいと思います。

年末年始の帰省を検討している方もいらっしゃると思います。移動そのものは感染のリスクにならないという考えもあるようですが、移動による感染リスクはゼロにはできません。実際に、移動中の航空機や高速列車内で感染したケースも報告されています。

さらに、帰省すれば家族・親戚や知人と食事する機会もあるでしょうし、感染拡大につながります。こちらもできれば「オンライン帰省」などを検討いただければと思います。

[注1]Tommaso Celeste Bulfone,et al.J Infect Dis.2020 Nov 29;jiaa742.

(ライター 増谷彩)

忽那賢志さん
国立国際医療研究センター国際感染症センター国際感染症対策室医長。2004年山口大学医学部医学科卒業。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。インフルエンザをはじめとする季節性の感染症のほか、デング熱、エボラ出血熱、回帰熱、ジカ熱などの輸入感染症に詳しく、水際対策の最前線で診療にあたっている。著書に『感染症診療とダニワールド』(シーニュ)、『症例から学ぶ輸入感染症A to Z』(中外医学社)など。

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