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BBC「今年の100人の女性」に選出 広島「富久長」杜氏

世界で急増!日本酒LOVE(28)

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NIKKEI STYLE

日本酒業界に今秋、ビッグニュースが飛び込んできた。英国BBC放送の「今年の100人の女性(BBC's 100 Women 2020)」に、「富久長」を醸す広島の老舗酒蔵、今田酒造本店(東広島市)の4代目蔵元で杜氏の今田美穂さんが選ばれたのだ。BBCが世界の人々に感動や影響を与えた女性たちを毎年選出しているもので、香港の民主活動家や、新型コロナウイルスワクチンを開発した英オックスフォード大の教授らと共に日本人では唯一、名を連ねた。

「約2カ月ほど前、突然BBCから連絡があり、ノミネートされました、と言われたのですが、まさか最終の100人に選ばれるとは」と今田さんは喜びを隠さない。コロナ禍で大変な世の中だが、「このニュースが日本酒業界に少しでもプラスに働けばうれしい」と期待する。

今田さんは100年以上の歴史を持つ老舗酒蔵で酒蔵経営と酒造りの両方を担う。20代の頃は東京で会社勤めをしていたが27年前、広島に戻り、家業を継いだ。杜氏になったのは、さらにそれから約10年後。今でこそ女性杜氏は全国各地で活躍中だが、当時はまだ珍しかった。

強靭(きょうじん)な体力と精神力が求められる酒造りは、昔から男性蔵人の仕事とされてきた。中でもその最高責任者、杜氏は熟練職人が担うのが通例で、蔵は"女人禁制"といわれた時代すらあったほどだ。

「地域や蔵によっても違うかもしれませんが、うちは厳格な男社会という感じではありませんでした。東広島市の一番南側、安芸津町は広島杜氏の里として知られ、伝統と技を受け継ぎ、男女関係なく皆ができることをやってきました。 "女人禁制"という言葉は地元では聞いたことがありません」と今田さん。

とはいえ、今田さんが出演したドキュメンタリー映画「カンパイ!日本酒に恋した女たち」(2019年公開)では、重そうな蒸米を抱えたり、冬場に白い息を吐きながら作業したりする光景が登場。並大抵の女性ができることではないのがすぐに分かる。この映画はイタリアでの映画祭でも上映され、"極寒の季節にストイックに酒造りが行われる酒蔵で陣頭指揮をとるのが、なんと女性の杜氏!"と非常にインパクトある映像として受け止められたらしい。「今回の選出は映画の影響もあるかもしれない」と今田さんは言う。

20代の頃にいったんは家業を継がないと決め、上京したのは、母親の大変な姿を目の当たりにしてきたからだ。今田さんは5人姉弟の長女として生まれ、9人家族の中で育った。ただでさえ大家族なのに、冬場にはさらに8人くらいの蔵人が泊まり込みで、早朝から酒造り作業にいそしむ。その世話全てを任されていたのが母親だった。

「大勢の食事を1日3回毎日作るなど家事をこなし、夜は経理の仕事をして…。寝ている母の姿を見たことがなく、私にはとてもできないと思った」と今田さんは振り返る。

今でこそ泊まり込みで酒造りをするという蔵は減ってきつつあるが、今も昔も多くの女性たちが酒蔵を支えてきたのは間違いない。だからこそ今田さんは「これまで表舞台には出て来なかったそんな女性たちにもっとスポットライトが当たるといい」と切に願う。

今田酒造本店は現在、8人で切り盛りしている。そのうちの半分は女性だ。子育てが一段落した40 代女性や、英国人の蔵人、京都大出身の日本人男性や地元出身のベテラン蔵人もいる。「うちは小さな蔵だから、酒造りだけでなく、その合間をぬっていろんな仕事をやらないと回らない。だから助け合いが基本」と話す。老舗酒蔵の4代目は柔軟な思考で、"蔵人ダイバーシティ"を実現しているようだ。

「富久長」を醸す同蔵は、約20年前から米国や香港など海外約20カ国・地域へ販路を広げてきた。現在は売上の2割を海外輸出が占めている。今田さんは「肉に合う赤ワインのようなポジションの日本酒」について考えを巡らせる機会が近年、めっきり増えたという。

欧州プロモーションの際、「 "透明感のある繊細な味わい"などと吟醸酒の特徴を英語で説明すると、『日本人はいつもクリーンとかクリアとか表現するね。ちなみにコンプレックス(複雑な味わい)については、日本酒ではどういう感じで考えているの?』と聞かれることがあるんです」と今田さん。その一言が今田さんの中に深い一言としてとどまっている。

今田さんが日本酒業界に入った約30年前は、まだ酒のバリエーションが少なかった。海外で日本酒といえば温めた「hot sake」(ホット サキ)しかなかった。その後、香り豊かな吟醸酒が脚光を浴びるようになる。今田さんはその間、栽培が難しいとされていた広島ルーツの酒米「八反草(はったんそう)」を復活させ、広島伝統の軟水醸造法による吟醸造りをベースとした繊細でやわらかい酒を追求してきた。

さらに広島特産の牡蠣(カキ)に着目し、魚介類との相性を考えた「海風土」(シーフード)という銘柄名のミネラル感と酸味が強めのユニークな日本酒も開発した。独自に"ハイブリッド酒母"も開発した。広島杜氏に伝わる伝統を踏襲する一方で、造りを進化させ、革新を重ねる。

「昔より酒造りの自由度が増し、より面白くなってきた」(今田さん)。魚介に合う酒を生み出した今、今度は肉に合う酒や複雑な味わいの酒づくりにも考えを巡らせる。

それぞれの蔵には酒造りのレシピなどに関する文献がたくさん眠っている。それらをヒントに今後、酒造りを復活させたり、ヒントにしていけば、日本酒が新しいステージに進めるのでは、と今田さんは可能性を模索する。「日本酒は白ワインのようにすしとか魚介に合わせるといい」という現在の海外の単調な日本酒イメージもまた進化させていけるのではと考えている。日本酒全体の価値向上に向けて、今回の受賞をバネにより一層、酒造りに精を出す今田さんだ。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)

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