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米倉涼子 美容液カナデルのCMで本気示した奇抜な舞

売れるCMキャラクター探偵団

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NIKKEI STYLE

日経クロストレンド

『8時だよ!全員集合』で加トちゃんのテーマ曲としておなじみだった『TABU(タブー)』をバックに、ドレス姿の米倉涼子が真顔で大胆な舞を踊る……。化粧品メーカー・プレミアアンチエイジングのオールインワン美容液「カナデル」のCMが注目を浴びている。米倉自身も驚いたという奇抜なCMを作った背景とは。

KinKi Kidsの成功で得たマーケ戦術

「ちょっとだけよ~」――。

晴れ渡る青空が気持ち良い都会のホテルのテラス。ライトパープルのドレス姿で現れた米倉が、「手抜きじゃない。本気よ!」と、妖艶な『TABU』のメロディーに合わせて大胆なポージングで迫る。「本気のオールインは……」と切り出す米倉だが次の瞬間、「カナデル プレミアホワイト オールインワン」と「カナデル プレミアリフト オールインワン」を両目に当て、「カナデール!」と、そのデビューを高らかに宣言。ソファに腰掛ける米倉は、カナデルの濃厚なオールインワン美容液を人さし指に載せ、「ちょっとだけよ~」と締めの一言を放ち、その美しい脚を組み替えてみせる。

化粧品メーカーのプレミアアンチエイジングが2019年に発売した、高機能エイジングケアブランド「カナデル」のCMに目を見開いた読者も多いのではないだろうか。ザ・ドリフターズの加藤茶が日本中を笑いの渦に巻き込んだ往年のテーマ曲と「ちょっとだけよ~」のフレーズ、脚を大胆に開いた独特な振り付け、真顔の米倉の目力――。思わずもう一度見たくなるクセの強いこのCMは、米倉が所属事務所から独立した直後の広告だ。

プレミアアンチエイジング・ダイレクトマーケティング本部本部長の上村敬吾氏は、「長年、いつかはオファーしたいと願っていた米倉さんに、ついにCM出演をお願いできた。このCM自体、米倉さんありきの企画だった」と、いちずな思いを打ち明ける。

機能性をほとんど伝えない代わりにインパクトが強烈なCMには、「一般的な認知をいかに広げるかに主眼を置き、とにかく記憶に残るものにしたかった」(上村氏)という狙いがあった。20年で創業11年目を迎えるプレミアアンチエイジングは、18年までデジタルマーケティング1本だった。そのため「認知がスマホの中だけに偏っていた」という。

そこで、18年に「DUO(デュオ)」ブランドのクレンジング剤「デュオ ザ クレンジングバーム」のCMキャラクターにKinKi Kids(キンキ キッズ)を起用し、初めてテレビ広告を打った。化粧品CMで主流の女優やモデルでなく、男性アイドルが着物姿で昭和歌謡風の歌を披露するという一風変わった演出が話題となり、認知度も急上昇。放送開始直前の18年8月の認知度は34.9%だったが、1年後には52.8%、20年9月には72.1%に達した。

DUOの成功に手応えを覚えた同社は、新製品のカナデルで前例を踏襲することにした。上村氏によると、ただマス広告を投下するのではなく「タイミングが重要」だという。「DUOは発売後にデジタルマーケティングや店頭で一定の購買層を開拓し、その後にCMを放映したことで効果があった。発売と同時に広告を打っても、砂に水をまくようなもの」(上村氏)。

販売店への影響が大きいため、カナデルでも発売後1年をかけてブランドを醸成させてから広告を制作した。その結果、CMリリース1カ月で認知度は上がり、CM総研が発表した20年10月のCM好感度では、DUOとカナデルで1位と2位を独占した(化粧品部門)。販売店の数もCM前は約600店舗だったが、米倉の出演を告げた途端、約8000店舗にまで拡大した。

CMの放映と同時に米倉起用も満を持して実現したカナデル。なぜそこまで米倉にこだわったのか。

「やるなら本気でやる」

「カナデルはこれまでのオールインワンへの効果が薄いというイメージを覆すため、構想7年でついに製品化にこぎつけた念願のオールインワンブランド。一切の妥協を許さず、何度も開発中断を繰り返した本気の製品なので、その本気度や上質感を伝えるには米倉さんしか思い浮かばなかった」と上村氏。

DUOは将来の自分の肌の土台をつくるというコンセプトで、ステップを踏んで手入れをするためシリーズ展開する。一方、カナデルは顕在化した肌トラブルを1品でケアするというコンセプト。美白とハリの2種の悩み別に、効果をすぐ実感できるかどうかを重視した。クリーム状の質感に医薬部外品として認可されるほどの有効成分を配合する技術の開発に時間がかかったという。

ターゲットは40代後半から50代で、『8時だよ!全員集合』をリアルタイムに楽しんだ層だ。TABUを採用したのは、ターゲット層のノスタルジーを刺激する狙いもあるという。大胆な振り付けは先述の通りインパクト狙いだが、「オールインワン市場では10位だったため、シェアをひっくり返すには、チャレンジャーとして振り切らないといけなかった」(上村氏)と、決死の覚悟だったという。

当初は米倉自身もその奇抜さに驚いたというが、「やるなら本気でやるわ」と引き受けたという。ブロードウェイ仕込みの米倉の本気の振りは、鬼気迫るものを感じるほどだ。

米倉の本気が伝わったのか、CM投下後の売り上げは20年度末には数十億円になるペースで伸びており、シェアも5~6位に急上昇する勢いだという。この成果を受け、続編も検討中とのこと。今作を超えるどんな衝撃的な「本気CM」が登場するのかが楽しみだ。

(ライター 北川聖恵)

[日経クロストレンド 2020年12月18日の記事を再構成]

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