大企業とイノベーション

大企業が成長を続けるための要件の1つに、イノベーションがあります。企業規模が大きくなるほど、経営革新へのハードルが高くなりがちです。日本企業が気をつけるべきポイントを記した部分を引用しましょう。

第1に「継続性」の罠だ。大企業には既存事業を既定路線で継続し、改良していく仕組みはたくさんあるが、新しいことの継続を阻む仕組みもたくさんあることに注意したい。
筆頭は社長・役員を含む人事異動だ。新しく代わるたびに新しい方針を打ち立てる。この結果何も実行に移されずに、永遠に「企画」を蒸し返すハメになる。
また、サイロになった組織問題がある。縦割り部署で「それはうちの管掌じゃないから」などと忖度や遠慮をして、推進オーナーが不在になったり、誰もボールをキャッチせずにポテンヒットになったりする。形式上の推進役がいても、兼務が多すぎて回らないという事例も多々見てきた。
株価や株主の目、既存コア事業を頑張ってくれている社員の目もある。業績が多少悪化するといろいろと言われるし、既存事業へのカニバリリスクやブランド毀損リスク、それに伴う社員や関連会社・取引先などの圧力に屈し、コンフォートゾーンに立ち戻る力学がきわめて強く働く。
(Chapter.4 イノベーションを実現する 297~298ページ)

第2、第3にポイントは、「リーン」をはき違えないことと、「自前」にこだわらないことと続きます。「リーン」というのは最小限の経営資源で最大限の顧客価値を提供することを目的とする経営のことです。大企業はアセットを豊富に持つので、必ずしも「リーン」ではなく、経営資源を十分に投下する判断もあり得るのです。

イノベーションに向き合うリーダーが取るべきアクションは、「デジタル革命の新しいルール、価値観を早急に受け入れて適応する」ことです。これは、イノベーションの創出だけに限った話ではありません。CXに取り組む経営者すべてに必要な姿勢です。

「10年、20年、30年後の会社を支えるのはいまの20代、30代、40代であるわけだし、現在の顧客を等身大で理解し、デジタルを活用した製品、サービスのつくり方やその運営、ひいては経営を担えるのも、この世代なのだ」。本書の締めくくりに出てくる一文です。デジタル革命は組織の「新陳代謝」を求めます。若手リーダーの活躍の場は必ず広がります。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・赤木裕介

昨年のコロナショックは、リーマン・ショックとよく比較されます。こうした大きな危機の前後では、業界構造が様変わりし、企業のポジションも入れ替わっている、ということが起こりやすいと言われています。

では、今回のコロナショックという危機をチャンスに変えるためには、いったい何が必要なのでしょうか。こうした議論から、本書の企画はスタートしました。

「先を読む」経営から「先が読めないことを前提に、企業能力を高めていく」経営へ。個々のビジネスパーソンに求められる能力も、コロナショック前と後では、大きく変わっている可能性が高いのです。

ぜひ本書から、「新常識の時代」を生き抜くためのヒントを見つけていただければ幸いです。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

BCGが読む 経営の論点2021

著者 : ボストン コンサルティング グループ
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,760 円(税込み)

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