丸投げは通用しない

ここで、データ・AI活用について、ありがちな失敗例を1つ紹介しましょう。開発部隊に丸投げをしてしまうケースです。

これまでのシステムのつくり方では、まず現場で「要件定義」を策定します。その後に開発部隊に丸投げするというスタイルでした。現場の人から見れば、開発はブラックボックスです。開発に投げて1年くらい待っていれば、完成したシステムが使えるようになるわけです。しかし、AIを使ったデータ分析では、それと同じ感覚では駄目です。データを集めてAIで分析しても、どの程度の結果が得られるかはわからないからです。

最初に精緻にシステム要件を作り込んで1年後に完成したが、思ったほどの精度が出ないケースがあります。また、完成時点では現場のニーズが変わっている、というようなことも頻繁に起こります。環境変化や技術進歩が加速しているためです。したがって、要件定義は最低限にとどめる必要があります。未完成であってもとりあえず現場で使ってみて、そのフィードバックをもとに修正を加え、少しずつ精度を上げていくわけです。

こうしたアジャイル型、分散型のアプローチをとるには、そういうスキルを持った人を各現場に少人数ずつでも配置しなければなりません。本格的に稼働させるには、アジャイル型で動ける組織をつくってオペレーションを組む必要があるでしょう。

ビジネスを激変させるOMO

Chapter.3では、顧客との関係について考察していきます。生活者との接点をもつ流通・小売で考えてみましょう。重要なキーワードはD2C(Direct to Consumer=消費者へダイレクトに)とOMO(Online Merges with offline=オンラインとオフラインの融合)の2つです。ここではOMOについて解説します。

OMOは、実店舗とオンラインを融合し、新たな購買体験を生み出す取り組みを意味します。「OMOの実現は、一つの業界構造を変えてしまうほどの可能性を秘めている」と本書は分析しています。

OMOを実現するには、新たな購買体験をどのように創造するかという観点に加え、ピッキングや配送などのオペレーションコストをいかに抑えるか、どのように課金して収益を上げるかが肝となる。
その具体的な方法について、ネットスーパーを例に考えてみたい。
新たな購買体験の創造は、生活者のペルソナを想定し、「実店舗に求めるもの」と「オンラインで済ませたいこと」が何かを考えることから始まる。
共働き家庭で、夫婦が自宅に帰るのは夜6時。そして7時にはお腹をすかせた子供たちに夕飯を出したい。そんな家庭なら、ネットで注文した商品をスーパーでピッキングしてもらい、仕事帰りに店舗に寄って受け取れるクリック&コレクトが受ける可能性がある。
こうした代表的なペルソナに対し、オンラインとオフラインのサービスをシームレスにつなげて提供する仕組みを設計することがまず必要となる。
(Chapter.3 顧客との関係を進化させる 204~205ページ)

こうしたサービスを実現するために、経営者がとるべき3つのアクションがあります。まず、コロナ禍によって変化した生活者の「新しいリアル」を把握する。そして、既存の市場や業界の垣根がどう変わっていくかに着目する。最後に、これが最も難しい点ですが「先んじて失敗し、その結果として先んじて成功する」という覚悟です。

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