ヒトの足跡は何を超えた? 人工物の重量、生物と並ぶ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/1/11
ナショナルジオグラフィック日本版

コンクリート製の橋やガラス張りの建物からコンピューターや衣服まで、人間が作ったあらゆるものの総重量が、地球上の生物の総重量を超えようとしていることが新たな研究で明らかになった(PHOTOGRAPH BY MCNAIR EVANS/REDUX)

環境保護論者はしばしば、人類が地球環境に与える負荷を「フットプリント(足跡)」と呼ぶ。それを小さくする必要があると訴えるが、このほど新たな研究により、人類が残した「足跡」の途方もない大きさが示された。

地球上の生物の総重量は約1兆1000億トンで、近年はあまり変化していない。それに対して、コンクリート舗装やガラスと金属でできた高層ビルから、ペットボトルや衣服やコンピューターまで、人間が建造・製造したものは指数関数的に増えている。2020年12月9日付で学術誌「ネイチャー」に発表された論文によると、両者の総重量は現在、ほぼ同じであり、2020年内に人工物のほうが上回る可能性があるという。

近年、人類が地球環境に重大な影響を及ぼすようになってからを「人新世」という新しい地質時代として扱おうとする提案があるが、今回の発見は、地球が人新世に入ったとする主張の裏付けとなる可能性がある。論文の最終著者であるイスラエル、ワイツマン科学研究所のロン・ミロ氏が言うように、世界は「一生に一度どころか一時代に一度」の重大な変化のときを迎えているのだ。

この洞察は科学的というよりは象徴的だ。とはいえ、人類の活動の規模を物質の量で表すことは、私たちがいかにして世界の養分の循環を変容させ、気候を変動させ、無数の生物種を絶滅の危機に追いやってきたかを説明するのに役立つ。

人類が地球に与えた影響を計量する試みはこれが初めてではない。2016年には、ある科学者チームが「テクノスフィア」の重量を推定している。テクノスフィアという考え方には、完全に人工的な建物や製品だけでなく、人間が都市建設や農業、畜産業、漁業のために改変した土地や海底のおおよその重さも含まれている。見積もりの結果、30兆トンという数字がはじき出された。ほかにも、植物に蓄えられている炭素の量や地球上のニワトリの総数など、生物の世界の変化だけを追跡した研究もある。

しかし、論文著者らの知る限りでは、人工物と生物の総重量の変化を同時に、しかし別々に網羅した分析はこれまで行われていなかったという。科学者が本物のリンゴとアップル社の製品を同一の基準で比較するのは難しいのだ。

人類全員が毎週、自分の体重以上を製造

この知識の隙間を埋めるため、ミロ氏らは、人工物と生物の重量についてこれまでに発表された複数のデータを集め、1900年から現在までの両者の変化を時系列でまとめた。過去120年間の人工物の総重量の推計は、産業生態学という分野での最近の研究から入手した。生物の総重量の変化については、衛星データと全球植生モデルから得られた。その結果は劇的だった。

20世紀初頭には、人工物の総重量は350億トンで、生物の総重量の約3%だった。以来、人工物のほうは指数関数的に増加し、現在では約1兆1000億トンに達しているうえ、年間300億トンずつ蓄積されている。これは地球上の人間全員が毎週、自分の体重以上のものを製造している量に相当する。

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