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ヒトの足跡は何を超えた? 人工物の重量、生物と並ぶ

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ナショナルジオグラフィック日本版

環境保護論者はしばしば、人類が地球環境に与える負荷を「フットプリント(足跡)」と呼ぶ。それを小さくする必要があると訴えるが、このほど新たな研究により、人類が残した「足跡」の途方もない大きさが示された。

地球上の生物の総重量は約1兆1000億トンで、近年はあまり変化していない。それに対して、コンクリート舗装やガラスと金属でできた高層ビルから、ペットボトルや衣服やコンピューターまで、人間が建造・製造したものは指数関数的に増えている。2020年12月9日付で学術誌「ネイチャー」に発表された論文によると、両者の総重量は現在、ほぼ同じであり、2020年内に人工物のほうが上回る可能性があるという。

近年、人類が地球環境に重大な影響を及ぼすようになってからを「人新世」という新しい地質時代として扱おうとする提案があるが、今回の発見は、地球が人新世に入ったとする主張の裏付けとなる可能性がある。論文の最終著者であるイスラエル、ワイツマン科学研究所のロン・ミロ氏が言うように、世界は「一生に一度どころか一時代に一度」の重大な変化のときを迎えているのだ。

この洞察は科学的というよりは象徴的だ。とはいえ、人類の活動の規模を物質の量で表すことは、私たちがいかにして世界の養分の循環を変容させ、気候を変動させ、無数の生物種を絶滅の危機に追いやってきたかを説明するのに役立つ。

人類が地球に与えた影響を計量する試みはこれが初めてではない。2016年には、ある科学者チームが「テクノスフィア」の重量を推定している。テクノスフィアという考え方には、完全に人工的な建物や製品だけでなく、人間が都市建設や農業、畜産業、漁業のために改変した土地や海底のおおよその重さも含まれている。見積もりの結果、30兆トンという数字がはじき出された。ほかにも、植物に蓄えられている炭素の量や地球上のニワトリの総数など、生物の世界の変化だけを追跡した研究もある。

しかし、論文著者らの知る限りでは、人工物と生物の総重量の変化を同時に、しかし別々に網羅した分析はこれまで行われていなかったという。科学者が本物のリンゴとアップル社の製品を同一の基準で比較するのは難しいのだ。

人類全員が毎週、自分の体重以上を製造

この知識の隙間を埋めるため、ミロ氏らは、人工物と生物の重量についてこれまでに発表された複数のデータを集め、1900年から現在までの両者の変化を時系列でまとめた。過去120年間の人工物の総重量の推計は、産業生態学という分野での最近の研究から入手した。生物の総重量の変化については、衛星データと全球植生モデルから得られた。その結果は劇的だった。

20世紀初頭には、人工物の総重量は350億トンで、生物の総重量の約3%だった。以来、人工物のほうは指数関数的に増加し、現在では約1兆1000億トンに達しているうえ、年間300億トンずつ蓄積されている。これは地球上の人間全員が毎週、自分の体重以上のものを製造している量に相当する。

人工物の大部分は、人間のお気に入りの建築材料であるコンクリートであり、レンガ、アスファルト、金属がそれに続く。現在の傾向が続けば、これらの人工物の総重量は2040年までに約2.2兆トン、つまり生物の総重量の2倍以上に達するだろう。

一方、生物のほうは植物が約90%を占めており、そのほとんどが高木や低木だ。人間が年々多くのものを製造しているにもかかわらず、地球上の植物の総重量は比較的安定している。著者らはこの理由を、森林の伐採と再生、そして大気中の二酸化炭素濃度の上昇による植物の成長の促進などが「複雑な相互作用」をなしているからだと説明している。

英レスター大学の古生物学の名誉教授ヤン・ザラシェビッチ氏は、この研究結果は、人類の影響を私たちがこれまでに見たことのないやり方で印象的に示していると評価する。なお氏は今回の論文には関わっていない。

人類が地球表面に及ぼす「変容の速度と規模について、従来とは違った視点を与えてくれます」とザラシェビッチ氏は言う。「変化を俯瞰(ふかん)的に見ることができるのです」

「人新世」の判断に影響か

そのような俯瞰的な視点は、人類の活動によって地球が人新世に入ったか否かに関する議論に影響を与えるかもしれない。この問題は現在、地球の地質年代の認定を行う学術団体である国際層序委員会(ICS)の人新世作業部会によって調査されている。

長年にわたって同作業部会の議長を務めたザラシェビッチ氏は、今回の論文は人新世が「物理的な意味で実在している」ことを裏付けていると主張する。氏は、人新世の物理的証拠は現在「きわめて広範に存在」しており、化石記録に明らかな痕跡を残すだろうとみている。

生物と人工物の重量の比較は、人類の影響の大きさを明確に示す指標ではあるが、生物の重量そのものも人類によって大きな変化を受けたことに注意する必要がある。この研究が指摘しているように、約1万2000年前に農業革命が始まり、人類が農耕のために広大な森林を伐採し始める前には、地球上の植物の重量は今の2倍はあったかもしれない。一方、人間と家畜の総重量は現在、野生の哺乳類や鳥類の20倍近くに上る。

現在の地球上にいる動物の総重量は40億トンで、これまでに生産されたプラスチック(80億トン以上)の半分にすぎない。

ミロ氏は、地球の生物圏の重量と構成の変化は「人類による影響のもう1つの側面」であり、私たちが及ぼした「劇的な効果」を示していると述べる。

米メリーランド大学ボルティモアカウンティ校の環境科学者アール・エリス氏は、今回の論文は人類による影響を「すばらしく例示したもの」だと評価する。ただし、総重量で人工物が生物を追い抜く時期を正確には特定できないと考えている。

「これは科学的な精度の問題ではありません。このような数値を計算する方法は無数にあり、その多くに不確実性があるからです」と氏はメールでの取材に答えた。

データの不確実性が、人工物が生物を総重量で上回る時期の厳密な判断を困難にしていることは、著者ら自身も認めている。論文の筆頭著者のエミリー・エルハシャム氏は、最大の不確実性は現在の植物総重量の推定値にあると言う。今回の研究では、より小さな動物や微生物が生物の総重量に占める割合もまた時間経過の中で一定であると仮定しているが、この仮定は今後の調査では覆されるかもしれない。

しかし、最終的な数字が少しずれたとしても、全体像が変わることはないとザラシェビッチ氏は言う。

「統計の違いによって数字がずれることはあるでしょう」と氏は話す。「けれども、20世紀初頭、20世紀半ばから後半、そして現在の21世紀初頭の差の大きさを考えると、パターン自体が覆ることはないでしょう」

(文 MADDIE STONE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年12月11日付]

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