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かまれて伝染するガン タスマニアデビルに迫る危機

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ナショナルジオグラフィック日本版

世界を混乱に陥れている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最初の報告から、1年が過ぎた。その間、感染症について多くの議論が繰り広げられてきたが、オーストラリアのタスマニア島に暮らす体長80センチほどの肉食有袋類、タスマニアデビルは30年もの間、恐ろしいパンデミック(世界的大流行)に苦しめられている。

かまれると伝染する顔のがん「デビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)」だ。ほかのがんと異なり、DFTDではがん細胞自体が伝染し、感染すると海綿状の口内炎を引き起こして口がただれ、やがて餓死する。致死率はほぼ100%だ。

DFTDにより、タスマニアデビルは14万頭から約2万頭にまで減った。タスマニアデビルは気性が荒く、繁殖期や主食である動物の死骸を争う際に、互いに噛みつくことが多い。おかげで、DFTDは簡単に広がる。ただでさえ絶滅が危ぶまれるなか、DFTDがタスマニアデビルを絶滅に追いやるのではないか、と多くの専門家が憂慮している。

しかし、2020年12月11日付で学術誌「サイエンス」に発表された論文で、珍しくも明るい兆しが示された。DFTDが初めて確認された時に比べ、実効再生産数が大幅に減少し、タスマニアデビルがこの病気と共存できる可能性が示唆されたのだ。

「これは本当にすごいことかもしれません。野生の群れでの感染が、以前ほどは拡大していないという話です」と、研究のリーダーである米カリフォルニア大学バークレー校の進化生物学者オースティン・パットン氏は話す。「感染速度が遅くなっているのです」

ウイルス研究の手法をがんに応用

このがんが初めて見つかったのは1996年だったが、1970年代か1980年代には発生していた可能性が高い。2015年、研究者はDFTDが1つのがんではなく、2種類のがんによって起きていることを突き止めた。そこで、厳密には以前から知られていたDFT1と、新たに見つかったDFT2とに分けられた。

両方とも感染すると腫瘍ができ、やがて餓死する。実質的には腫瘍の区別はつかないものの、2つのがんは遺伝的に異なる。また、その起源も異なり、DFT1はメス由来で、DFT2はDFT1とは島の反対側のオスに由来するという。

「脊椎動物の伝染性腫瘍は珍しいにもかかわらず、DFT2の発見は、我々にとって大きな驚きでした」と、2015年に学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に論文を発表した著者の1人である豪タスマニア大学の免疫学者ブルース・ライオンズ氏は話す。自然界で確認されている伝染性のがんは、イヌやムール貝で見つかったものなど、ほんの一部だけだ。

同氏らは今回、タスマニアデビル全体におけるDFT1の感染経路を明らかにしようと、ウイルスの研究でよく使われる「系統動態解析」と呼ばれる手法を使ってみた。

系統動態解析では、病原体の遺伝子から、病原体が時間とともにどのように広がって行ったかや、どのように進化したかを明らかにできる。パットン氏のチームは、2000年代初頭から採取し始めた51匹のタスマニアデビルの腫瘍のサンプルを用いて解析を行った。

サンプル採取を始めた2003年ごろには、このがんの実効再生産数は約3.5だった、とパットン氏は言う。これは、1匹が感染すると、平均3.5匹に伝染させていたことを示している。

しかし最後のサンプルを採取した2018年には、実効再生産数が1を下回っていた。つまり、タスマニアデビルがこのがんで絶滅する可能性は低いということだ。

それでも、これは必ずしも朗報とは言えない、と同氏は注意を促す。再生産数が低くなったのは、単に個体数が激減して感染効率が下がったためかもしれないからだ。また、この研究ではDFT2については調べておらず、その感染率はわからない。

複雑ながん、ワクチン開発に影響も

2020年11月に学術誌「PLOS Biology」に発表された別の論文は、このがんがもっと複雑なものであることを示唆している。

論文の最終著者である英ケンブリッジ大学の遺伝学者エリザベス・マーチソン氏らは、DFT1には共通の祖先から進化した5つの異なるタイプ(系統群)が存在し、それぞれが同じ1つの個体に感染する可能性があることを発見した。「これはある意味、乳がんが脳や肺、肝臓に転移するように、DFT1がタスマニアデビルの群れの中でも『転移』するようなものです」と、マーチソン氏はその状況をたとえる。

そして、この遺伝子的な差異は、タスマニアデビルが種としてどのように回復するかに影響するかもしれないという。

例えば、ライオンズ氏は感染を予防するワクチンの開発に取り組んでいるが、がんの遺伝的な複雑さが問題をさらに難しくする可能性がある。

同様に、飼育下の個体がこの病気と戦うように進化的適応をしていなければ、野生への再導入が裏目に出るかもしれない。

2016年以降、捕獲した個体をタスマニア島に放していないのは、まさにこれが理由だ、と豪シドニー大学の保全生物学者キャロリン・ホッグ氏は言う。一方、最近オーストラリア本土に放された個体は、このがんに接触したことが一切ない個体だ。

「この病気がまん延する中でも、多くの群れが存続しています」と同氏は話す。タスマニアデビルはほかにも、近親交配、生息地の分断、交通事故など、様々な脅威に直面している。

このように悪条件が重なっているにもかかわらず、保護活動家はあきらめていない。「野生のタスマニアデビルに関わる人たちは、慎重ながらも楽観的なのです」

(文 JASON BITTEL、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年12月14日付]

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