コロナ禍による在宅勤務や運動不足により、筋肉の減少や全身の健康リスクが高まっている。筋肉減少に歯止めをかけるには、筋肉の材料となる「たんぱく質」の摂取、そして「筋トレ」が不可欠だ。筋肉量が増えるとボディーラインが見違え、顔の印象も若返るという。ここでは効率的なたんぱく質の摂取方法と、無理なく筋トレを継続するヒントをまとめた。
(1)たった2週間の運動不足で筋肉量が減少

コロナ禍での「不活動」や在宅勤務によるリモート生活で、運動不足を実感している人も多いだろう。この傾向は、世界中で起こった。医学雑誌「Nutrients」による報告では、激しい運動、中等度の運動、ウオーキングの時間、いずれも30%程度減った一方、座り時間が30%ほど増えていた(データ:Nutrients. 2020 Jun; 12(6): 1583.)。
同時に行われた食生活調査では、ステイホーム期間は不健康な食品を摂取する頻度が高まり、食べる量をコントロールできなくなり、間食や深夜の軽食の頻度が高くなる、という傾向が見られた。
立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授は、コロナ禍による日常生活の活動量の減少による体への影響を危惧する。藤田教授が問題視するのは、活動量不足による筋肉量の減少だ。
「歩数を普段の3割ほどに減らすという研究では、たった2週間で筋肉量が約4%減少しました」(下グラフ)。
歩数を減らすと筋肉量が減った
「たった4%」と侮ってはいけない。「筋トレを3カ月間一生懸命頑張っても、増える量は3~4%ほど。それだけの筋肉量が、活動量の減少によって一気に減るということが示されたのです」(藤田教授)。通常に生活していても、筋肉は30歳代以降1年に1%ずつ減っていくといわれる。少し運動不足が続くだけでも、短期間のうちに、まさに老化の凝縮ともいえる現象が進行するのだ。
筋肉の減少は、全身の健康に悪影響をもたらすことが近年、続々とわかってきている。韓国で筋肉量と2型糖尿病の発症の関連を調べた前向きコホート研究がある。この研究では、筋肉量が少ない人は2型糖尿病リスクが高くなった。BMIで分けたところ、非肥満の人で11.9%、肥満で19.7%、リスクが増加した(Diabetologia. 2017 May;60(5):865-872.)。
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(2)朝食でたんぱく質が不足していると筋肉量が減る

筋肉を作る材料として忘れてはならないのが、たんぱく質だ。
藤田聡教授は、「筋肉減少に歯止めをかけるには、筋肉の材料となる朝のたんぱく質摂取から見直す必要があります」と指摘する。
たんぱく質は、筋肉や血管、内臓や皮膚、ホルモンや酵素といった全身の組織の材料となる。その総重量は体重の30~40%にも及ぶ。「特に、筋肉においては、水分以外の約80%がたんぱく質によって構成されています」(藤田教授)。筋肉量の維持のためには、材料となるたんぱく質を食事から補うことが欠かせない。
さらに、近年の研究からわかってきたことがある。「一日に取る合計量よりも、朝・昼・夜の3食で均等に、十分な量のたんぱく質を取ることが筋肉合成のカギを握ります」(藤田教授)。
では、筋肉の合成のために私たちはどのくらいのたんぱく質を取るべきなのか。