最新科学が支える計画

プロジェクトを支えているのは、新たに海洋調査を行い、16本の論文を発表した253人の科学者たちだ。論文のテーマは、プラスチックごみの除去から気候変動の対策まで、多岐にわたっている。少なくとも9本が学術誌「ネイチャー」に掲載されている。

「科学的なプロセスは、非常に厳格に行われました」。カナダ、ダルハウジー大学のボリス・ワーム氏はそう語る。氏はカナダ代表の科学アドバイザーを務める海洋科学者だ。「様々な利害を持つ人が集まるとき、データがあれば余計な押し問答をしなくて済みます。データはデータ。一致団結して行動できるのです」

グレート・バリア・リーフで産卵するサンゴ。歴史や文化に海が深く根差す国々が結集し、それぞれが管轄する海を保護していくことで合意した。議論を支えているのは科学的なデータだ(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET, NATIONAL GEOGRAPHIC)

ハイレベル・パネルはまた、海洋に対する考え方という面で常識を覆そうとしている。海を単なる気候変動の被害者と捉えて保護区を作るだけではなく(もちろん、温暖化と酸性化という被害を受けているのは間違いないのだが)、全てを持続的に管理しようというのだ。適切に管理されれば、漁業を含む海洋経済は拡大が可能だという。

加えて、炭素を吸収するマングローブ、藻場、海草などを回復させることで、世界全体の二酸化炭素排出量を5分の1程度まで減らせる可能性がある。また、温暖化を1.5度にとどめることも可能かもしれないという。

「私たちはこれまで、海を保護するか利用するかの二者択一で考えてきました」と、オバマ政権下で米海洋大気局のトップを務め、ハイレベル・パネルの専門家会議でチェアパーソンも務めたジェーン・ルブチェンコ氏は語る。「それは誤った選択です。海を利用しつつ枯渇させない、もっと賢いやり方を私たちは発見しつつあります。秘訣は、海洋生態系の健全度を保つことです」

氏が言うには、沖合での風力発電、そして潮力発電や波力発電を開発していくというパネルの提言を実行すれば、再生可能エネルギーを今よりも40%増加させることができる。これらを通じて何百万という人々が貧困から脱出できる可能性もあるという。パネルに参加した経済学者たちは、持続可能な海洋を構築するための投資1ドルにつき、5ドルの経済的、社会的、環境的利益が生まれると予測している。

提言には74個のアクションが含まれており、中にはすでに進行中のものもある。たとえば、ガーナでは外国船の追跡が可能になり、違法漁業を大きく減少させられるようになった。一方で、プラスチックごみの流出を減らすといったアクションは、コストがかかるため、進むのに時間がかかるかもしれない。

上空から見るグレート・バリア・リーフ(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET, NATIONAL GEOGRAPHIC)

野心的な目標

こうした取り組みはどうせまた掛け声だけの無益なものだと思う人もいるかもしれない。だが、首脳たちは、小さな一歩を踏み出すというような段階はすでに過ぎており、より抜本的な行動に取り組むべき時だと考えている。この数十年、人口は膨張し、魚資源は減少し続けている。この間、資源を全く回復させられていないことが、その事実を物語っているだろう。

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